Archive for 7月, 2013

2013年度 中部支部第1回研究会

Posted in 研究会 on 7月 18th, 2013 by admin – 3 Comments

日時:2013年8月3日(土)14時~18時
会場:名古屋大学情報科学棟第1講義室
(名古屋市千種区不老町〒464-8601 地下鉄「名古屋大学」下車1番出口より西へ徒歩6分,下の地図のA4③)

■ スケジュール

14時         あいさつ
14時5分   研究発表3件(詳細は下記参照)
(15時35分-45分     休憩)
15時45分  remoによる講演(詳細は下記参照)
16時45分  ディスカッション
司会:宮下十有会員(椙山女学園大学文化情報学部メディア情報学科)
ディスカッサント:森田剛光会員(名古屋大学大学院文学研究科博士研究員),青山太郎会員(名古屋大学大学院国際言語文化研究科博士前期課程修了),稲垣拓也会員(名古屋大学大学院情報科学研究科博士前期課程)
17時20分  支部総会
17時30分  全学教育棟中庭のフェリーチェ・ヴァリーニ作品見学
18時          中華料理店「香蘭楼」で懇親会

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■ 講演者・タイトル

・ remo

「『野生のアーカイブ』の方法論

- オールド・ビジュアルメディアのアーカイブプロジェクト、AHA!の実践 -」

■ 講演要旨

近年、コミュニティの記録・記憶を次代に継承することの気運が、国内において急速に高まっています。それに伴い、博物館(美術館)・図書館・公文書館などに よって確立されてきた従来のアーカイブ構築の理論と実践の外側で、NPOなどを主体としたアーカイブの実践が草の根的に萌芽しています。
このような市民参加型のメディア実践は、東日本大震災を契機にますますその意義を高めており、わが国のアーカイブ実践における新しい潮流を形成していくことが予想されます。しかしながら、解決すべき課題やさまざまな障壁も山積しており、いまだ発展の途上にある状況です。
本講演では、2005年から大阪を中心に独自の発展を遂げてきたアーカイブプロジェクト・AHA!の取り組みを、[収集・公開・保存・活用]といった一連のワークフローのプロセスを辿りながら、当事者みずからご紹介します。そして、国内における諸処のアーカイブ実践における本事例の独自性を明らかにすると ともに、その可能性—あるいは「光の遅さ」について—を皆さんと分かち合いたいと思います。

■ プロフィール

AHA![ Archive for Human Activities / 人類の営みのためのアーカイブ ]
パーソナルな記録に潜在する社会的な価値に着目し、それらの収集・公開・保存・活用をめざす試み。「想起」という集合的行為を媒介とした「場づくり」の創出をめざし、独自の方法論でアプローチしている。remo[記録と表現とメディアのための組織]の事業の一つとして、2005年に始動。大阪を拠点にしつつ、全国各地で展開中。昭和30〜50年代にかけて一般家庭に普及した「8ミリフィルム」をアーカイブの対象にしている。アーティスト、デザイナー、研究者など、様々なバックグラウンドをもったメンバーによって運営されており、プロジェクトごとにチーム編成を流動的に行いながら展開している。

http://www.remo.or.jp

http://blog.livedoor.jp/daigo8miri/

http://coop-kitakagaya.blogspot.jp/

■ 研究発表者・タイトル

・森田剛光会員(名古屋大学大学院文学研究科博士研究員)

「映像活用によるミュージアムの再生:インドネシア・バリ島トゥガナン村の事例」

発表要旨:

本研究発表は、映像の活用を通じて、長年放置されていたミュージアムの再生をはかる目的で実施したプロジェクトの報告とその考察である。プロジェクトの対象であるトゥガナン・プグリンシンガン慣習村は、インドネシアのバリ島東部に位置する。1963年アグン山の噴火により、農業から観光業を生業に加えた。スハルト体制下の観光開発の流れに乗り、バリの「原住民」文化を残す村として広く宣伝され、国内外から観光客、文化研修の学生らが常に訪れる観光と共に生きる村落である。
しかし、村の文化を伝える方法を模索する中、村の長老らは、多数訪れる人々の質問の相手役に引っ張り回され疲弊していく。1990年代、その打開策として村内に博物館の建設計画が立ち上げられたが、バリ島の高温多湿の環境下で収蔵品の保管、管理の課題を解決出来ないまま、建物の建設途中で中断された。
2010年、村のリーダーの一人(司祭)を中心に、前計画の反省から現物展示の博物館ではなく、自分達の文化を映像として蓄積し、自分達の力で自文化を発信する情報センターとしての機能を重視したミュージアムの再生ができないかという話が持ち上った。村落の人々と共同で計画が練られ、その一つとして「バリ島の先住民村落デジタル・ミューアム建設にむけた若手人材育成プロェクト」 が、KDDI財団の助成を受け実施された。
発表者は、本プロジェクトに、映像技術者、映像人類学者として参画した。 本発表では、本プロジェクトでの村落内での組織作り、機材の選定、映像制作のフローを紹介すると共に、プロジェクトを通じて村落の人々の経験に注目し、レンズを通して自分の世界を見る経験と、ビデオカメラ、編集環境というツールを独自に持つことの意味を考察する。

・青山太郎会員(名古屋大学大学院国際言語文化研究科博士前期課程修了)

「知的探求の方法としての映像制作の可能性について

−宮永亮『arc』にみられる記憶の表象」

発表要旨:

デジタル技術の発達と普及によって私たちの映像体験は一見きわめて多様化したが、それにともなって日常に膨大な数の映像が氾濫し、それらを無批判に消費・再生産することで私たちの思考が抑圧されるという事態がしばしば指摘されている。
本発表は、思考を賦活するメディアとしての映像との関わり方を考察する契機として、映像を作る過程において生じる思考や知について論じる。
その参照項として本発表では映像作家の宮永亮の制作プロセスに注目する。宮永の制作手法は、ビデオカメラで撮影した実写映像を素材とし、PCでミックスやエフェクトを繰り返しつつ複数の映像レイヤーを重ね合わせるというものである。宮永が2011年に発表した『arc』(HD, 7min. 30sec.)は、震災前後の東北地方の風景などを重層的に組み合わせることで、それらの映像の間の断絶した関係を再構築している。それは記憶―イメージを見る側の人間の記憶だけでなく、イメージとしてみられる側の世界の記憶―のあり方へのビジョンをもたらしている。
発表者は宮永へのインタビュー調査によって、彼の制作プロセスを分析・構造化し、そこからいくつかの特性を抽出した。本発表では、それらがどのように制作者の思考に関わり、その制作プロセスを経ることでどのような知が創造されるかについて、『arc』イメージがもたらす記憶の問題を通じて論じる。

・稲垣拓也会員(名古屋大学大学院情報科学研究科博士前期課程)

「アーカイブ化された展覧会をARで体験する」

発表要旨:

過去におこなわれた展覧会を、ARを利用して実地にて体験できるシステムを開発している。システムでは、展覧会を仮想的に再現したものをiPadのカメラを通して見るとともに、展示と作品についての情報を表示する。記録誌や記録映像とは異なるアーカイブの受容の機会を提供することで、展覧会についての多様な理解をもたらし、新たな気づきを得ることを目的とする。


以上。