2016年度 中部支部 第3回研究会

2016年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第3回研究会 

日時:2017年03月07日(火)13:30〜18:30頃
会場:愛知淑徳大学長久手キャンパス(愛知県長久手市片平二丁目9)
11号棟1F ミニシアター
http://www.aasa.ac.jp/guidance/campus_guide/nagakute.html

◎会場へのアクセス
 <市バス>
 地下鉄東山線「本郷」2番乗場より名古屋市営バス「猪高緑地」行き乗車、
 終点「猪高緑地(愛知淑徳大学)」下車(所要時間約15分)
 http://www.aasa.ac.jp/guidance/map.html
 <お車の方>
 北門駐車場の守衛室受付にて「映像学会参加」とお伝えください。

◎スケジュール
 -13:30~13:35 開催校挨拶
 -13:35~14:00 研究発表:潘沁(パン・チン)氏
 -14:05〜14:30 研究発表:盧銀美(ノ・ウンミ)会員
 -14:35〜15:00 研究発表:石井晴雄会員+米島竜雄会員
  休憩(展示作品の鑑賞)
 -15:30〜18:20 学生作品プレゼンテーション
  参加校:愛知県立芸術大学、椙山女学園大学、名古屋学芸大学、愛知淑徳大学、
      情報科学芸術大学院大学[IAMAS]、名古屋芸術大学(発表順)※予定

 -終了後、学内にて懇親会

◎研究発表

アニメにおける絵画的風景の想像力 ー 『かぐや姫の物語』の身体とランドスケープ表象
潘沁(パン・チン)氏 (名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程)

要旨:
2013年に上映された『かぐや姫の物語』は高畑勲の作品の集大成として見なされている。作品における「余白を生かして描かれた背景美術」や、透明水彩の着色の技法・フラスケッチの線などの作画技法は長編アニメ映画としては異例であり、新しいアニメーションの表現として話題になった。とりわけ、現在の日本の主流のアニメーション製作方法と違い、『かぐや姫の物語』は、キャラクターと背景の一体化を極限まで追求し、「一枚の絵」として機能するような独自の作画技法を用いることで、作品全体を動いている絵巻のように見せている。『かぐや姫の物語』の風景表象はアニメーション固有の表象の特徴を示していることは明らかである。だが、これまでの研究では、ナラティヴや、製作技術などを論じることが主流となり、ランドスケープ表象の役割が看過される傾向にあった。

本発表では、『かぐや姫の物語』をケーススダーディとして、作品におけるランドスケープ表象の特徴を解明しながら、アニメ映画におけるキャラクターの身体と風景の関係性を試論することを目論む。先ず、『かぐや姫の物語』の作画技法を考察した上、「思いやり」型の風景が如何に成り立っているかを明らかにするとともに、風景が如何にスペクタクルとして機能しているかを論証する。さらに、自然風景とかぐや姫の身体のインタラクションを分析し、ランドスケープ表象がキャラクターの身体と協働し、一種のメタファーとして機能していることを検証する。『かぐや姫の物語』におけるランドスケープ表象は、一方で、独特な作画の技法により、ナラティヴから脱逸し、一種のスペクタクルになっている。他方で、かぐや姫の身体は、自然風景と深くかかわり、風景を通して情動と抵抗を示すこともある。『かぐや姫の物語』はこれまで看過されたアニメ映画におけるキャラクターの身体と風景の可能性を考える上で有意義な事例となっている。

トーキー定着期におけるヴォイス・オーヴァー――1930年代中期の成瀬巳喜男映画を中心に
盧銀美(ノ・ウンミ)会員(名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程)

要旨:
日本映画史において、トーキー映画が定着したのは1935年以降といわれている。そうしたトーキーに関して、移行期の諸問題や定着の背景が多角的に研究されているが、音声による語り方の問題、特にヴォイス・オーヴァーに注目した研究はまだ不足しているのが現状である。ヴォイス・オーヴァーは、1930年前後に製作されたミナトーキーから使用されはじめ、トーキーの定着と共に数多くの劇映画で語りの技法の一つとして採用されてきた。そうしたヴォイス・オーヴァーは、1935年以降には「ナラタージュ」という一つの特殊な表現技法として概念化された。また、それ以外にも内面を伝える語り方として使用され、当時はその語り方を「独白」と名づけた批評もみられる。

そこで、本発表では、1935年以降の日本映画のヴォイス・オーヴァーを中心に、トーキー定着期の特徴と内面の語り方を考察する。さらに、成瀬巳喜男監督のヴォイス・オーヴァーの採用に注目する。P・C・Lに移った翌年の1935年からトーキー映画を製作し始めた成瀬の多くの映画には、ヴォイス・オーヴァーにより内面を語る場面が多い。その中で、本発表では、特に成瀬の初のトーキー作品でナラタージュを採用した『乙女ごころ三人姉妹』(1935年)とすだれ式のヴォイス・オーヴァー使用で話題になった『雪崩』(1937年)を取り上げながら、内面を語る声を分析する。そうすることで、トーキー定着期におけるヴォイス・オーヴァーの特徴とその語り方を歴史的に考察していく。

知多半島ケーブルネットワーク「地域のお宝発見、マルトモ探検隊」
—地域における子供による情報発信の効果—

石井晴雄会員(愛知県立芸術大学), 米島竜雄会員(株式会社 第二制作)

「マルトモ探検隊」は知多半島ケーブルネットワーク株式会社と愛知県知多半島の常滑市、美浜町、南知多町、武豊町の4市町在住の小学生たちが共同で「地域の魅力情報(=お宝)を発信する」テレビ番組シリーズである。

制作した番組はケーブルネットワークの放送エリア(常滑市、美浜町、南知多町、武豊町)で毎日2回、30 分番組として放映されている。
制作のプロセスは以下の通りである。

1、 地域の小学生4 〜6 年生3 〜6 人程度の「探検隊員」を募集。
2、 「探検隊員」が行きたいところ、体験したいことの希望を聞く。
3、 実際に体験取材することができる場所をスタッフが事前にヒアリング、ロケハンをおこない、候補を絞り込む。
4、 探検1日目に隊員たちと実際に行く場所や体験することを決め、取材、インタビュー、レポート撮影を2カ所程度おこなう。
5、 探検2日目も2カ所程度取材、インタビュー、レポート撮影を行う。
6、 3日目はそれまでの探検(=体験取材)の模様を編集した映像を試写し、2日間の体験レポートの中から印象に残ったことや場所を絵と短い文章にして発表する。
7、 編集をおこない、ナレーションを録り、放映する。

マルトモ探検隊は事実を正確に伝えること、体験を通して伝えること、子供たちが自分のイメージと言葉で伝えることに留意して制作している。
地域の子供たちがその地域の人たちのところへインタビュー取材に行くことによって、地域の住民も「地域の子供達にで、リサーチやロケハンによってできる限り子供の素直な反応が引き出せる場所や体験、取材対象を選び、子供たちの率直な反応を引き出してそれを映像に収めることが、番組全体に活力を与える結果になった。

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◎学生作品プレゼンテーション(発表順)※予定

愛知県立芸術大学
 |ゾートロープによるインスタレーション
   尾崎友紀(デザイン・工芸科 環境デザイン領域4年)
 KÉMURI SHAPER|現象を鑑賞するプロダクト;鑑賞装置としての煙
   増成香月(デザイン・工芸科 環境デザイン領域4年)

椙山女学園大学
 17代目「夢道源人」仲間と共に歩むファイナルへの道のり|映像作品|14m(本編29m)
   村田絢菜(文化情報学部メディア情報学科4年)
 ふぁいっ|映像作品|3m(本編25m)
    吉川結女(文化情報学部 文化情報学科 3年)

名古屋学芸大学
 放課後|映像インスタレーション|2m30s
   奥村雪乃(メディア造形学部 映像メディア学科 3年)
 月と檸檬|メディアインスタレーション
   岩井春華(メディア造形学部 映像メディア学科 3年)
 Eternal shine|映像インスタレーション
   髙木拓人(メディア造形学部 映像メディア学科 4年)
 lack|アニメーション|4m35s
   水野朱華(メディア造形学部 映像メディア学科 4年)

愛知淑徳大学
 「LGBTという言葉を知っていますか?」「LGBTQ voice」|映像作品|5m(本編12m)
    高梨瑠衣(メディアプロデュース学科 メディア表現コース 4年)
 Liner|映像作品|3m
   庭瀬幸佳(メディアプロデュース学科 メディア表現コース 4年)
 『alt』|ビデオインスタレーション|3m
   小木曽 護(メディアプロデュース学部メディア表現コース4年)

情報科学芸術大学院大学[IAMAS]
 “for the light surface” series|映像インスタレーション
   丹羽彩乃(メディア表現研究科 2年)
 Layering / 2012-2017 |映像インスタレーション
   原田和馬(メディア表現研究科 1年)

名古屋芸術大学
 ゆっくり解けていく|アニメーション|4m(本編13m)
   三浦 瞳(デザイン学科 メディアデザインコース 4年) 
 swim,under the darkness|映像作品|5m(本編51m55s)
   田口愛子(デザイン学科 メディアデザインコース 4年)
 Mask Doll|セルフポートレート作品(写真)
   大久保志帆(デザイン学科 メディアデザインコース 4年)

以上