2021年度 中部支部 第1回研究会

2021年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第1回研究会
日時:2021年10月17日(日)13時30分より
会場:名古屋芸術大学東キャンパス1号館7階アセンブリーホール
(〒481-8503 愛知県北名古屋市熊之庄古井281番)
中部支部会員はオンラインによる視聴可能(予定)

・発熱、咳などの風邪症状がある方は、ご来館をお控えください。
・新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、手指消毒にご協力ください。
・マスクの持参及び着用をお願いします。

◎研究会スケジュール(予定)
13:15 –  第1回研究会 受付開始
13:30 –  開会あいさつ
13:35 – 14:35 研究発表(2件)
休憩
14:50 – 15:50 招待講演(1件)
15:50 – 16:20 ディスカッション
16:20 − 16:50 施設見学
16:50 –  閉会あいさつ


17:00 –  支部総会
(研究会終了後に開催)

◎招待講演
アナザーサイト──ギャラリーと生活空間をつなぐディジタル・アーカイヴ
茂登山 清文氏、遠藤 麻里氏

要旨:
私たちは,さまざまなモノに絶え間なく眼をむけ,情報を得て,日々を過ごしている。だが,見るという当たり前の行為について,どれほど意識し,理解しているだろうか?発表者らが取り組んできたヴィジュアルリテラシーは,見る対象はもとより,見る行為そのものに関する学際的な研究領域である。今回の企画「アナザー・サイト」では,現在,急速に一般化しつつあるイメージのオンライン観賞の課題のひとつである,見ることの「希薄化」をテーマとしている。見ることに特化したギャラリー空間と,日常的な生活空間とをつなぐことで,目の前に実在する物と,彼方にあるものを「見る」想像力について考えてみる。プログラムの組立てにあたっては,ACRL(大学・研究図書館学会)による「効果的に見つけ、解釈し、評価し、使い、つくりだすこと」を参照するとともに,ディジタル・アーカイヴの表現手法として,インフォメーショングラフィクスを試みた。

茂登山 清文(もとやま きよふみ)氏 プロフィール
名古屋芸術大学芸術学部特任教授 専門は,情報デザイン・視覚文化・ヴィジュアルリテラシー。建築論を学んだ後,主にアートとデザインをフィールドに活動。現在は,見ることについて実践的に思考するとともに,「芸術としての教養」教育に取り組んでいる。共編著に『情報デザイン』放送大学教育振興会,『ヴィジュアルリテラシー スタディーズ』中部日本教育文化会ほか。

遠藤麻里(えんどう まり)氏 プロフィール
金城学院大学国際情報学部講師 専門は情報デザイン・電子社会デザイン。社会の中の情報をICT技術を用いて、いかに見せ、応用するかについて研究を行う。「都市風景写真の活用とヴィジュアルリテラシーへの応用のためのアプリケーション開発」など。



◎交流空間「TERA」の見学(谷野大輔氏)
名古屋芸術大学東キャンパスに,ギャラリー「Art & Design Center East」,カフェ「Akkord」などからなる交流空間「TERA」が,2020年11月にオープンした。プロジェクトのコンセプトと経緯,学生参加などについて説明した後,施設を訪れ使われている椅子のコレクション,「アナザー・サイト」の展示を見学する。


◎研究発表(2件)
エストニア芸術アカデミーのアニメーション演習を反映させた「構成的思考」による物語の作り方
有持 旭 会員(近畿大学 准教授)

要旨:
プリート・パルンは母国エストニアだけでなく世界的に著名なアニメーション作家であり、多くの国の大学で教鞭を執ってきた。中でもエストニア芸術アカデミー(EKA)作品は国際映画祭で高評価を維持している。これまで日本国内でもエストニア作品の批評や論考を読む機会は幾度かあった。私の博士論文や紀要論文もそれらに含まれる。作品や作家を通してエストニア・アニメーションが紹介され論じられてきたわけである。
本発表では、作家であり大学教授であるパルンがどのようにアニメーション制作を指導してきたのか、そのノウハウを物語の作り方に注視し解説する。そしてその例としてパルン作品やEKA作品を見ていく。想像力とは何か。調和と緊張。思考を構成的にする。バラストを取り除く。こうした制作プロセスは風刺画家だったパルンのキャリアだけでなく、モスクワ・タルトゥ学派から継承されているエストニアの記号論とも関係してくるように考えられる。

「『ストリーミング・ヘリテージ|台地と海のあいだ』の報告
ー1989年以降の名古屋におけるメディア・アート / メディア・デザインの水脈とともに

吉川 遼 氏(名古屋文理大学 助教)
秋庭史典 氏(名古屋大学 教授)
伏木 啓 会員(名古屋学芸大学 教授)

要旨:
『ストリーミング・ヘリテージ|台地と海のあいだ』は、2020年度に企画されたアートプロジェクトである。3年度にわたって実施予定であり、1回目は2021年3月に行われ、2回目は2021年11月に行われる。「メディア=コンシャス/メディアへの意識」をテーマに、名古屋城と港をつなぐ堀川に隣接する産業・歴史遺産を利用して、国内外のアーティストによるインスタレーションやパフォーマンスを展示・上演し、研究者やアーティストを招いてのトークイベントも行われる。
本発表では、3月に実施したプロジェクトの報告とともに、世界デザイン博(1989年)や名古屋国際ビエンナーレ/ ARTEC(1989-97)より現在まで脈々とつながる名古屋におけるメディア・アート / メディア・デザインの水脈を視覚化する計画について説明する。

◎補足情報
日本映像学会中部支部 幹事会
※幹事メンバーのみ
12:45-13:15

◎会場へのアクセス(名古屋芸術大学東キャンパス)
http://www.nua.ac.jp/outline/access/index.html
*名鉄犬山線「徳重・名古屋芸大」駅より東へ徒歩10分
*車で来場する場合は会場1号館北側の来客駐車場に停めてください
(許可申請・記名の必要はありません)
東キャンパスマップ
https://www.nua.ac.jp/campuslife/campus/east/

2021年度 中部支部計画

中部支部では、2021年度の研究会を下記のように計画しています

・中部支部第1 回研究会:
10月17 日(日)|会場:名古屋芸術大学(オンライン配信あり)
(研究発表1,2件、招待講演1件、予定)
研究会後、同会場にて総会を開催

・中部支部第2 回研究会:
3月(日程調整中)|会場:愛知淑徳大学
(研究発表1,2件、学生作品プレゼンテーション を予定)

2020年度 中部支部 第2回研究会

2020年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第2回研究会
2021年3月10日(水)13時30分よりオンライン開催
担当校:名古屋学芸大学

◎研究会スケジュール
13:20 –  受付開始(中部支部会員 / 学生作品プレゼンテーション参加者)
13:30 –  (配信開始)開会あいさつ
13:35 – 14:05 研究発表
(1件、発表20分、質疑応答5分 予備時間5分)
<休憩> 5分
14:10 – 15:20頃 学生作品プレゼンテーション I
<休憩> 10分
15:30 – 16:30頃 学生作品プレゼンテーション II
16:30 –  閉会あいさつ
16:35  終了予定

 

◎研究発表

「Fluctuate」「Fluctuate 2」について
森真弓会員(愛知県立芸術大学)

要旨:
この2作品は、日ごろ意識しているモノやコトの隙間にある、無意識を意識させることによって、新たな気付きを生み出す効果を狙ったVR映像である。重ねられた環境音とスリットやグリッドで区切られた風景は、見る人が何を意識するかによって揺れ動く。知っているようで知らない、わかりそうでわからない、非日常のような日常を表現している。
 
 

◎学生作品プレゼンテーション
研究会当日は、作品制作者の学生によるプレゼンテーション(3分程度)と質疑応答(5分程度)が行われます。

<発表者(発表校順)>
◉名古屋芸術大学
『井守端会議』
 浅田 一樹(芸術学部 芸術学科 デザイン領域 メディアデザインコース 4年)
『INTENTION』
 ディレクション:平山 亮太、作曲:武石 智仁(芸術学部 芸術学科 デザイン領域 メディアデザインコース 3年)

◉愛知県立芸術大学
『SYNCROLL』
 上田朝也(美術学部 デザイン・工芸科 デザイン専攻 4年)
『Make a pattern』
 石川 陽菜(美術研究科 博士前期課程 美術専攻 デザイン領域 2年)

◉静岡文化芸術大学
『Deep in Blue』
 桜木 葉月(デザイン学部 ビジュアルサウンド領域 4年)
『LOTOPO』
 杉屋 泰誠(デザイン学部 ビジュアルサウンド領域 4年)

◉椙山女学園大学
『Afterglow 9:16で撮影』
 二村 真以(文化情報学部 メディア情報学科 4年)
『楽しく過ごそうおうち時間』
 西川 みゆ, 伊里 成未, 小野田 往子(文化情報学部 メディア情報学科 4年)

◉中京大学
『re:mind』
 赤尾 将吾 (発表者)、他(工学部メディア工学科、他)

◉名古屋学芸大学
『戯れ子ばこ』
 西尾 秋乃(映像メディア学科 インスタレーション領域 4年)
『記し”shirushi”』
 成田 開(大学院 メディア造形研究科 2年)

◉名古屋文理大学
『Magic of Reverie』
 倉知 駿(情報メディア学部 情報メディア学科 3年)

◉愛知淑徳大学
『河出雄浩 映像作品集』
 河出 雄浩(創造表現学部 メディアプロデュース専攻 4年)
『池田美結 デザイン作品集』
 池田 美結(創造表現学部 メディアプロデュース専攻 4年)
 
 

◎補足情報
日本映像学会中部支部 幹事会(オンライン)※幹事メンバーのみ
12:45-13:15

2020年度 中部支部 第1回研究会

2020年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第1回研究会
2020年12月12日(土)13時30分よりオンライン開催
担当校:情報科学芸術大学院大学[IAMAS]

◎招待講演
佐藤 時啓氏(写真家)
1:17:08 –(40分)
◎研究発表
須藤 信 会員(愛知淑徳大学人間情報学部 助教)
11:07 –(20分)
鈴木 浩之 会員(金沢美術工芸大学 美術科油画専攻 准教授)
41:00 –(20分)

◎研究会スケジュール(予定)

13:00 –  受付開始
13:30 –  開会あいさつ
13:35 – 14:30 研究発表
(2件、発表20分、質疑応答5分 予備時間5分)
休憩 10分
14:40 – 15:15 招待講演(1件 35分)
15:15 – 15:30 ディスカッション(15分)
15:30 –  閉会あいさつ
15:35 終了
13:20 –  受付開始(中部支部会員)
13:30 –  (配信開始)開会あいさつ
13:35 – 14:30 研究発表
(2件、発表20分、質疑応答5分 予備時間5分)
休憩 10分
14:40 – 15:15 招待講演(1件 35分)
15:15 – 15:30 ディスカッション(15分)
15:30 –  閉会あいさつ
15:35  終了

◎招待講演
Camera Obscura から Magic Lanternプロジェクト
ー 光に触れるこころみ ー

佐藤 時啓氏(写真家)

デジタル時代の今日、光が孔を通じて暗闇にイメージを成すこと、その光と闇との呼応関係に気づく機会はほぼ無いと言って良い。しかしその実、映像が生じる仕組みとしては針孔の原理が発見されカメラオブスクラが発明された時代から何も変わっていないのだ。どんなに高級なデジタルカメラを使って写真を写そうにも、8Kのプロジェクターでイメージを投影しようとも、今のところ光学原理の根本である、孔を通じたイメージのやり取りやレンズガラスの屈折による集光という仕組みから逃れることは出来ない。しかしながら現在はその部分を全く意識せずにインターフェースの操作でイメージが得られる時代になった。私はそんな時代を生きながら、光学原理の原点を用いて作品を制作し、そして人々ともに様々なワークショップの活動を行っている。また美術のコンテクストから始まった私の行為も、モダンからポストモダン、そしてさらなる時代への思考から人々との関係性を構築する活動がベースになってきた。

佐藤 時啓(さとう ときひろ)氏 プロフィール
1957年、山形県酒田市に生まれる。1981年、東京芸術大学美術学部彫刻科卒業。1983年、同大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。1990年、第6回東川賞新人作家賞受賞。1993年、メルセデス・ベンツ・アート・スコープ賞受賞によりフランス滞在。1994年、文化庁在外研修員としてイギリス滞在。2015年、第65回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。国内外で個展を多数開催、グループ展にも多数参加。東京都写真美術館、埼玉県立近代美術館、シカゴ美術館、ヒューストン美術館などに作品が収蔵されている。現在、東京藝術大学美術学部先端芸術表現科教授。

現在、佐藤時啓氏は原美術館「光―呼吸 時をすくう5人」に出品されています。原美術館でのトークの記録がインターネットで公開されており、自作解説を聞くことができます。こちらをご覧になってから招待講演をご視聴いただくことをお薦めします。

原美術館「光ー呼吸 時をすくう5人」展 鼎談記録映像

◎研究発表(2件)

「手が潰される感覚」を味わうメディアアートの開発

須藤 信 会員(愛知淑徳大学人間情報学部 助教)※発表者
山口 李々菜(愛知淑徳大学人間情報学部 4年)※共同研究者

要旨:
近年のHMDを用いるVRコンテンツでは、身体所有感の研究が進められている。名古屋市立大学大学院の研究者らが発表したStretchar (m)(2017)では、ぶら下がり運動を用いて腕の伸縮感を誘発させることが可能であることが明らかにされた。このように、HMDを用いて体験者に疑似的な感覚を与えるVRコンテンツが開発されているが、手指の動きが連動するコンテンツの制作は進んでいない。手指がVR環境で連動することは、体験の没入感や身体所有感を高めることが期待できるため、本研究では現実環境とVR環境の手指の動きが連動し「手が潰される感覚」が得られるメディアアートを開発した。
本作品は、鋼板が設置された机の前で、HMDを装着して体験する。椅子に座った体験者の視界に、作業台、椅子、ドア、蛍光灯、ハンマーが設置された空間が展開される。その空間では、巨大なハンマーが作業台に数秒おきに振り下ろされており、体験者は自身の手を鋼板へ伸ばすことで、振り下ろされるハンマーによって手が潰されることを疑似体験することができる。

地球観測衛星と電波反射器を利用した地上絵制作プロジェクトについて/2019年度の制作記録と8K映像化の試み

鈴木 浩之 会員(金沢美術工芸大学 美術科油画専攻 准教授)

要旨:
本発表では、継続中のアートプロジェクト「だいちの星座」(共同研究者:宇宙航空研究開発機構 研究開発員 大木真人氏 / JAXA地球観測研究センター第4回研究公募[2013~17年度]、JSPS科研費[2013~15年度、2016~18年度、2019~21年度]採択)の活動のうち、2019年11月に埼玉県久喜市にて実施された地上絵制作プロジェクト(主催|文化庁、埼玉県教育委員会)について振り返る。
2019年の埼玉県での活動は、小学校の校庭で児童らと臨んだ地上絵制作において電波反射器を自立・配置する手法を試みた。また、従来〈写真〉としてデジタルCプリント出力してきた「だいちの星座」作品を、「おさなごころを、きみに」展(2020年/東京都現代美術館)にてUHD 8K映像作品として上映した。コロナ禍でのプロジェクトの状況とあわせて、近年の活動を紹介する。
(参考映像「だいちの星座―えづらだいに彗星」4Kバージョン

◎補足情報

日本映像学会中部支部 幹事会(オンライン)※幹事メンバーのみ
12:45-13:15

日本映像学会中部支部 支部総会(オンライン)※中部支部会員のみ
(研究会終了後、引き続き Zoomを使用予定)※調整中
15:45 –  支部総会開催
16:15   終了

【中止】2019年度 中部支部 第3回研究会

新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、
2020年3月10日に予定しておりました
日本映像学会中部支部 第3回研究会は中止となりました。


2019年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第3回研究会

日時:2020年 3月 10日(火)13:30-
会場:名古屋学芸大学
(愛知県日進市岩崎町竹ノ山57)

2019年度 中部支部 第2回研究会

2019年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第2回研究会
日時:2019年12月21日(土)13時30分より 
会場:椙山女学園大学(星が丘キャンパス)
   文化情報学部メディア棟128教室
  (〒464-8662 名古屋市千種区星が丘元町17番3号)

◎研究会スケジュール(予定)
13:00 –  第2回研究会 受付開始
13:30 –  開会あいさつ
13:35 – 14:35 研究発表(2件)
       休憩
14:50 – 15:50 招待講演(1件)
15:50 – 16:20 ディスカッション
16:20 –  閉会あいさつ
(終了後 懇親会)

◎招待講演
人類学実践ツールとしての映像制作-関係の記録を例として
南出 和余 氏

要旨:
ふるくはマリノフスキーの頃から人類学者たちは、フィールドワークの中で「イメージ」
を記録するために、写真や映像を活用してきた。「厚い記述」によって人類学者の立ち位
置や関係性が注視される以前に、映像人類学ではすでにルーシュによって「カメラの人格
化」が提示されていた。カメラ(と撮影者)がそこに在ること(撮影すること)がその場
に影響を及ぼし、時にカメラの前の人々をトランス状態にする。カメラが収める「真実」
とはそうした撮影者と被写体の共犯関係によって作られたものであるとされる。
本報告者は、2000年からバングラデシュの農村でカメラを持ってフィールドワークを継
続してきた。当初の調査対象は「子ども」であったが、同じ対象を追い続けているうちに
彼ら彼女らは「子ども」ではなくなった。最初、カメラは子どもたちと私の間の「遊び道
具」であったが、彼らが変化するに連れて、私の撮影に対する彼らの態度もカメラの存在
も変わっていった。また、子どもの頃から撮り貯めてきた映像は彼ら彼女らの記録となり
、私と彼らとの関係の変化をも示し、時折一緒に見返すことで、互いの再帰的解釈を生み
出す。本報告では、1人の少女=女性と私の記録映像を事例に紹介しながら、自己と他者、
過去と現在が交差するところに導かれるイメージ理解、それを助ける映像実践について考
えてみたい。

南出 和余(みなみで かずよ)氏 プロフィール
1975年生まれ。現在、神戸女学院大学文学部英文学科准教授。
神戸女学院大学大学院人間科学研究科(修士)、総合研究大学院大学文化科学研究科(民博)(博士)。専門は、文化人類学、映像人類学。
著書に、『メディアの内と外を読み解く―大学におけるメディア教育実践-』(南出和余、木島由晶編著、せりか書房、2018年)『「学校化」に向かう南アジア―教育と社会変容―』(押川文子、南出和余編著、昭和堂、2016年)『「子ども域」の人類学―バングラデシュ農村社会の子どもたち―』(南出和余、昭和堂、2014年)『フィールドワークと映像実践―研究のためのビデオ撮影入門―』、(南出和余、秋谷直矩、ハーベスト社、2013年)等。映像作品にXX Parnu International Documentary and Anthropology Film Festival Award for Best Scientific Documentary 「Circumcision in Transition(割礼の変容)」(2006年、36分)等がある。

◎研究発表(2件)
サークルとしてのアニメーション文化—1960~1980年代の日本を中心に
林 緑子 会員(シアターカフェ 運営)
名古屋大学人文学研究科博士課程前期課程

要旨:
従来の日本のアニメーション研究は商業アニメと著名作家の短編作品の分析が中心であり、アニメーションのファン文化研究では商業アニメのファンとしてのオタクの分析が中心だった。だが、オタクという呼称の成立以前の1960年代後半から、 国内外で制作された様々なアニメーションを好むファンの動向が国内で起き、国内各地にアニメーションサークルが発足している。彼ら・彼女らは受容・上映・制作の側面における活動を通じて、商業アニメとも関連しながら、オタクとは異なる文脈で日本のアニメーション文化を支えてきた。この事実はこれまでの研究史からは見過ごされている。
本発表では、アニメーションサークルの特徴を明らかにした上で、この活動を日本のアニメーション研究とファン文化研究の文脈に位置付ける。これにより従来の研究とは異なる観点から、アニメーション文化史の研究に貢献したい。

意味の発掘としての「取材」—事物への意味付けの変化を提示する作品とその制作プロセスについて
片山 一葉 会員(美術作家)
愛知学泉大学、愛知淑徳大学、大同大学、名古屋大学、非常勤講師 
/愛知県立芸術大学教育研究指導員

要旨:
近年、作品の設置される環境にまつわる情報から展開されるサイトスペシフィックな芸術作品は、国際美術展や各地のアートプロジェクトの広がりとともに、確立された表現の一種となった。そのような作品は、何らかの形でその場所に関する情報を収集し編集することで成立するが、私の制作活動においても、ある場所または人物について取材を行い、そこで得たモノ・映像・言葉といった素材をもとにインスタレーションを構成することにより、日常の中で意識されることなく存在の意味が失われつつある事物を採り上げ見つめ直すことを目的としている。また、上記の制作における方法論を用いて、ギャラリーや美術館のイベントとして、日常生活とは違った事物の観察手法を体験するワークショップも行っている。
本発表では、「取材(そしてその結果の提示)という行為による、事物への視点や意味付けの変化」を「意味の発掘」として捉えることを試みながら、今までに制作した作品・実施したワークショップの事例を報告する。

◎補足情報
日本映像学会中部支部 幹事会
12:50-13:20(場所:文化情報学部メディア棟128教室)

◎会場へのアクセス
椙山女学園大学(星が丘キャンパス)

http://www.sugiyama-u.ac.jp/univ/campus/map/hoshigaoka/

星ヶ丘キャンパスまでは、地下鉄東山線「星ヶ丘」下車、6番出口より徒歩5分。
会場は、上記リンク先のD棟(文化情報学部メディア棟)。
正門から直進、右側の赤い柱がある棟の中に入り階段を上がった1階。

2019年度 中部支部 第1回研究会

2019年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第1回研究会
日時:2019年8月27日(火)13時30分より
会場:中京大学 豊田キャンパス
   16号館4階グループ学習室C
  (470-0393 愛知県豊田市貝津町床立101)

◎研究会スケジュール(予定)
13:00 –  第1回研究会 受付開始
13:30 –  開会あいさつ
13:35 – 14:35 研究発表(2件)
       休憩
14:50 – 15:50 招待講演(1件)
15:50 – 16:20 ディスカッション
16:20 –  閉会あいさつ
16:30 –  支部総会(研究会終了後に開催)
(終了後 懇親会)

◎招待講演
「公共建築設計におけるアイデアやデザインの共有」
小松 尚 氏

要旨:
1950年代から70年代にかけての都市や経済の成長期には数多くの公共建築が建設された。当時はスピーディかつ効率よく公共建築を建設し、新たな住民や利用者を受け入れる必要があったため、標準設計という手法がとられ、各地に類似の形態をした公共建築が建設された。例えば、学校建築がどこへ行っても大体同じなのはそのためである。しかし現在は、既成市街地の中で物理的、機能的、社会的寿命を迎えた既存の公共建築を建て替えるため、現在の利用者や地域関係者との協議が計画上、避けて通れない。特に学校建築は、基礎自治体が保有する公共建築の中で面積上、多くを占めるだけでなく、学校は日本の地域コミュニティの中で社会文化的にも空間的にも重要な位置を占めるため、建て替えの計画・設計における合意形成のあり方や方法は大きな課題である。その中で、松阪市鎌田中学校の校舎建替計画においては、設計案の完成予想図や模型、3次元CAD等とともに、単眼VRが中京大学准教授の曽我部哲也氏によって制作され、地元住民に体験してもらうという試みを行った。デザインを共有するためのあらたなメディアやツールは、建築設計だけでなく教育自体のあり方を大きく変えていく可能性がある。鎌田中学校での実例をもとに、建築と映像のこれからの接点について議論したい。

小松尚(こまつ ひさし)氏 プロフィール
名古屋大学大学院環境学研究科准教授。博士(工学)。一級建築士。1966年生まれ。1992年名古屋大学大学院工学研究科建築学専攻前期課程修了。2006年から現職。専門は建築計画。著書(共著、分担執筆)に『「地区の家」と「屋根のある広場」』(小篠隆生共著、鹿島出版会、2018年)、『Towards the Implementation of the New Urban Agenda』(Springer, 2017)、『まちの居場所』(東洋書店、2010年)、『地域と大学の共創まちづくり』(学芸出版社、2008年)など。市民協働による公共建築計画・運営への指導、助言として、いなべ市石榑小学校(2002年~:公共建築賞優秀賞)、亀山市川崎小学校(2012年~)、松阪市鎌田中学校(2015年~)など。

◎研究発表(2件)
Volumeの生成によるメディア表現
加藤 良将 会員(名古屋芸術大学講師)

要旨:
私の作品に共通することの一つとして、Volumeの生成による驚きがある。それは、私の興味ある作品がキネティック・アートやライト・アートにあることによるかもしれない。簡単に作品を紹介すると、【White Lives on Speaker】(2007、Ars Electronica PRIX 2007)では、デンプンを水で溶いた液体をスピーカによる振動によって起こるダイラタンシー現象を用いて、観客は白い液体が生きているかのような動きを見ることができ、触れることによって不思議な体験ができる。
また、【Rokuro-2】(2008、 第15回学生CGコンテスト/デジタル・スタジアム)や【micRokuro】(2010)では、光ファイバーを高速に回転させることによって出来上がる球体を手で触れることによって、陶芸における轆轤のように自由に形態を変えることができる。それはまるで触れることのできない光を掴んでいるような体験である。
どちらも動いていない状態では不定形な液体や一筋の線状であるため、人が触れて体験できるようにするためにVolumeを作成し、触れることによって普段味わうことができないような不思議な作品となっている。今回はこれまでに行ってきた作品制作と展示の報告を行う。

「都市デザインとしての小規模な美術教育の仕組み「長者町スクール・オブ・アーツ」の試みと必要性について」
山田 亘 会員(写真家/メディア表現)
PAC代表 アートセンター[Yojo-Han] ディレクター   
長者町スクール・オブ・アーツ代表
名古屋芸術大学、名古屋学芸大学、名古屋造形大学非常勤講師

要旨:
一般的にみられる美術センターは通常大型の設備を持ち、多数のコンテンツを多くの人数に手渡すことを常としており、特に都心部では施設そのものの維持継続に多くのエネルギーや公的な予算を必要とし、自立するものは少ない。2012年に発足した、持続可能で経済的に自立することが容易な小規模美術教育のための私立アートセンター[Yojo-Han]の試みは、アーティスト達の小規模組織による社会人に向けた先進的な美術教育のための、一つのローモデルであり、2018年に名古屋都心部に登場したアートコレクティブ「長者町スクール・オブ・アーツ」へとその構造の可能性を繋げ、拡げている。本発表では、2009年から始まったプロジェクトベースの新聞編集部を運営する作品から、創造性教育のための仕組みを都市デザインに組み込むアートセンター[Yojo-Han]への発展、センターの写真映像スクールPACellの試みについてや、長者町スクール・オブ・アーツの本年度のプロジェクト「ART FARMing」につながる流れを報告し、社会人向けの上質で小規模な美術教育の必要性について解説する。

◎補足情報
日本映像学会中部支部 幹事会
12:50-13:20(場所:16号館4階グループ学習室C)
日本映像学会中部支部 支部総会
16:30-(場所:16号館4階グループ学習室C)

◎会場へのアクセス(中京大学豊田キャンパス)
https://www.chukyo-u.ac.jp/information/access/h2.html

<お車でお越しの方>
学内駐車場をご利用ください。(無料)
守衛門にて「映像学会中部支部会参加のため」とお知らせください。
・東名高速道路 東名三好ICから約20分
・名古屋瀬戸道路 長久手ICから約20分

<公共交通機関でお越しの方>
・名鉄豊田線浄水駅からスクールバスで約10分
・愛知環状鉄道貝津駅から徒歩15分

<スクールバス運行案内>
https://www.chukyo-u.ac.jp/support/studentlife/a7.html

2019年度 中部支部 計画

中部支部では、2019 年度の研究会を下記のように計画しています。

・中部支部第1 回研究会:8月27 日(火)|会場:中京大学 
(研究発表1,2件、招待講演1件、予定)
 研究会後、同会場にて総会を開催。

・中部支部第2 回研究会:11月もしくは12 月(日程調整中)|会場:椙山女学園大学
(研究発表1,2件、招待講演1件を予定)

・中部支部第3 回研究会:3 月(日程調整中)|会場:名古屋学芸大学
(研究発表1,2件、学生作品プレゼンテーション を予定)

2018年度 中部支部 第3回研究会

2018年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第3回研究会

日時:2019年 3月 1日(金)13:30-
会場:名古屋造形大学 C棟(C601)
(愛知県小牧市大字大草6004)

◎スケジュール
-13:30-13:35 開催校挨拶
-13:35-14:00 研究発表(1件)
-14:15-17:40 学生作品プレゼンテーション
-17:50-      学内にて懇親会


◎研究発表
「休日映画」─ネットワーク上における短編映像群による映像表現の試みについて─
 齋藤 正和 会員(名古屋学芸大学 映像メディア学科 専任講師)

要旨:
「休日映画」は2009年から続けてきた短編映像群によるプロジェクトである。本作品は、スクリーンやTVモニターによる視聴ではなく、PC上で動画共有サイトにアップロードした映像を視聴することを想定して制作をはじめ、現在もアップデートし続けている。この10年間、映像の制作・視聴環境の変化には目紛しいものがあった。一眼レフカメラによる映像制作は一般化し、また、ネットワークを介してのPCやスマートフォンによる映像視聴もすっかり定着した感がある。本発表では、制作開始時のメディア環境に触れながら作品の制作背景を述べることで、現在の映像環境について検討することを試みたい。


◎学生作品プレゼンテーション

◉名古屋造形大学
『/CENTUM (パーセンタム)』|プロジェクションマッピング
 伊吹 悠、後藤 弘樹、酒井 久栄、出口 暁与、辻 ひかる
(造形学部 デジタルメディアデザインコース4年)

◉名古屋芸術大学
『BRAIN LIFE』|シングルチャンネル
 高橋 陸(デザイン学部 デザイン学科 メディアデザインコース4年)
『あたたかさ ー作り手から買い手へー』|シングルチャンネル
 加藤亜実(デザイン学部 デザイン学科 メディアデザインコース4年)

◉名古屋学芸大学
『生まれてくる君へ』|インスタレーション
 成田 開(映像メディア学科 インスタレーション領域 4年)
『わたしが知っている本当のこと』|写真
 半澤 奈波(映像メディア学科 フォト領域 4年)
『ユメみばなにうつつ』|シングルチャンネル
 増田 優太(映像メディア学科 アニメーション領域 4年)

(休憩 )

◉椙山女学園大学
『観光・絶景〜愛知県の四季と魅力〜』|シングルチャンネル
 市川 鼓乃美(文化情報学部 メディア情報学科4年)
『生理痛ちゃん』|シングルチャンネル
 大崎 彩花(文化情報学部 メディア情報学科4年)
『なくしてません』|シングルチャンネル
 高橋 佑果(文化情報学部 メディア情報学科4年)

◉情報科学芸術大学院大学
『Processing を用いた深層学習の可視化の試み』|インスタレーション
 津曲 洸太(メディア表現研究科 修士1年)
『displayed_scape』|インスタレーション
 小濱 史雄(メディア表現研究科 修士2年)
『multi-faceted』|インスタレーション
 長野 櫻子(メディア表現研究科 修士1年)

◉愛知淑徳大学
『ジェンダーと若者 〜インタビューにもとづくドキュメンタリー映像〜』
 |シングルチャンネル
 坂下 可蓮(メディアプロデュース学部 メディアコミュニケーション専修4年)
『古民家×プロジェクション「こみくしょん」』|ソーシャルアート
 森本 真由、猪飼 みちる、成田 彩、 野々山 慧音
(創造表現学部 メディアプロデュース専攻3年)

◉愛知県立芸術大学
『Elephant’s』|シングルチャンネル
 池田夏乃(美術学部 デザイン・工芸科デザイン専攻 メディア領域4年)
『Wire Frame Architecture』|インスタレーション
 石川 陽菜(美術学部 デザイン・工芸科デザイン専攻 環境領域4年)


◎会場へのアクセス

https://www.nzu.ac.jp/about/access/

<お車でお越しの方>
学校駐車場をご利用ください。(無料)
・東名高速道路 春日井ICから約15分
・中央自動車道 小牧東ICから約10分

<公共交通機関でお越しの方>
・JR中央本線春日井駅からスクールバスで約20分
・JR中央本線高蔵寺駅からスクールバスで約20分
・名鉄犬山駅からスクールバスで約35分
・桃花台センターバス停からスクールバスで約7分
https://www.nzu.ac.jp/school_bus/

<時刻表>
https://www.nzu.ac.jp/school_bus_vacation/

以上

2018年度 中部支部 第2回研究会

2018年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第2回研究会

日時:2018年12月22日(土)13時~16時半
会場:名古屋芸術大学東キャンパス1号館7階アセンブリーホール
(〒481-8503 愛知県北名古屋市熊之庄古井281番)
※アクセスの詳細は、文末に記載しています。

「視覚メディアのレイヤー ─イメージ,身体,記録」
現代,視覚イメージが私たちのまわりに溢れている。いや,そう言うことすら忘れてしまうほどに,生活に浸透している。イメージをめぐる,見いだし,撮影し,編集し,そして記録するという作業は,すでに独立した行為のリニアな連続とは想定できない。カメラアプリがファインダースクリーンにあらかじめ予測される像を結ぶように,イメージは,時と場所を横断して機能する幾重ものメディアのなかで,生成する。本研究会では,そうした事態を,イメージに寄り添う身体ないしは行為から,あるいはメディアと記録との関係において,読み解き,提示することを試みる。
2組3人のゲストを迎える。酒井健宏氏は,映像作家として映画制作する一方,名古屋芸術大学ほかで映像関係の授業を担当している。近刊の『身体化するメディア/メディア化する身体』(西山哲郎・谷本奈穂編著)では,「多層化する視覚メディアと身体」を著した。真下武久氏と竹内創氏は,それぞれ大学で研究・教育にたずさわるとともに,個人で,またユニットの一員としてもアーティスト活動を展開している。近年では,ともに「物質性ー非物質性 デザイン&イノベーション」展で発表した。

◎スケジュール
-13:00-13:10 開催校挨拶
-13:10-13:40 研究発表:松浦拓也会員
-13:50-14:20 作品発表:河村陽介氏
-14:20-14:40 休憩(*真下武久氏・竹内創氏による作品「Immaterial Archive」鑑賞)
-14:40-15:30 招待講演:酒井健宏氏
-15:40-16:30 招待講演(展示含む):真下武久氏+竹内創氏
-17:00-     懇親会(会費3000円,銘軒=研究会会場より徒歩5分)

**

◎招待講演(2件)

「つながる/かさなる視覚メディアと身体」
酒井健宏氏

要旨:
このあいだテレビでやったアニメの映画をビデオに録ったからパソコンで見る。ありふれた発言のように聞こえるが、 本来これは実に複雑なことだ。視覚メディアは多様化(multi-)かつ多層化(layered)している。今日このような状況をもたらしているもっとも大きな要因が、デジタル技術に基づく視覚メディアの普及によるものであることに議論の余地はないだろう。今や私たちはパソコンやスマホに表示される静止画像を「写真」と言い、デジタルデータで上映される動画像を「映画」と呼んでいる。この複雑さと直面しながら視覚メディアを研究対象とするには一体どのような視点が有効であろうか。本講演では、視覚メディアの歴史において生じた複数の「写真から映画へ」に注目することで、その視点の一つを提供したい。とりわけ視覚イメージの加工(いわゆる編集や合成)の様態とその歴史的変容に着目し、それぞれの「写真から映画へ」が(イメージとして記録された)身体をどのように加工および表象してきたのかを例に挙げながら示したい。

酒井健宏(さかい たけひろ)氏 プロフィール
1977年生まれ。映像作家・映画研究。
名古屋大学大学院情報科学研究科博士後期課程中退。98年に大学の映画サークルに所属したことがきっかけで制作を開始。07年『キッス占い』がTAMA NEW WAVEコンペティション部門入選。11年『CSL/タカボンとミミミ』がうえだ城下町映画祭自主制作映画コンテスト審査員賞受賞(大林千茱萸賞)。14年『ハチミツ』が第1回LOAD SHOWコンペティション入選。16年、名古屋市港区にて地域映画『右にミナト、左にヘイワ。』を制作・監督。近著に『身体化するメディア/メディア化する身体』(分担執筆)。

**

「物質性―非物質性 デザイン&イノベーション」展 あるアーカイヴの試み
真下武久氏 + 竹内創氏(合同発表)

要旨:
「物質性―非物質性 デザイン&イノベーション」展(京都dddギャラリー/2016)は、1985年にパリのポンピドゥー・センターで開催された「非物質的なもの(Les Immatériaux)」展(ジャン=フランソワ・リオタール監修)へのオマージュである。本研究は、物質性をキーワードに展覧会アーカイヴの「ある試み」を行う。我々は非物質的な環境に取り囲まれて生活している。そうした中、今改めて「物質性」が問われることになってきた。“印刷物に収まりきらない作品の記録と再表現は可能であるか?”京都展に関わったことで展覧会のアーカイヴというものを考えるきっかけになった。「非物質的なもの」展(1985)のカタログは印刷物ではあるが、ページが綴じられていない。カード式と呼ばれるものになっており、作品同士の関連性を読者が自由に見つけられるよう意図的に作られている。このカタログをモデルにノンリニアに体験できるアーカイヴができないかと考えた。参加した作家のイニシアルを使ってポスターをデザインすることから始め、このポスターをインターフェイスとして展覧会の風景、作品、情報を検索する装置として作り上げている。今回のアーカイヴは、読者がポスターの前でタブレット端末(iPad)を操作し、AR(拡張現実)技術によって展示作品を非物質的に浮かび上がらせることになる。

コンセプト: 竹内 創
デザイン: ニコール・シュミット
サウンドデザイン: 外山 央
プログラミング: 真下 武久

真下武久(ましも たけひさ)氏 プロフィール
1979年生まれ。成安造形大学准教授。
IAMAS(情報科学芸術大学院大学)修了。日常の物理的な制約をインタラクティブアートを通して解決し、新しい体験を作り出す。蒸気に映像を投影したインタラクティヴな作品「Moony」(2004)は、アルスエレクトロニカにて “the next idea”部門で受賞。主な展覧会に『Media City Seoul」(2005)、「Gwangju Biennale」(2006) 、「Shenzhen Ink Painting Biennale 」(2008)、「Sundance Film Festival」(2011)など。

竹内創(たけうち はじめ)氏 プロフィール
1968年生まれ。ニューメディア研究/アーティスト。名古屋芸術大学准教授。
パリ第8大学 DEA 第三期高等教育課程、フランス国立高等装飾美術学校 Post-Diplôme 修了。インタラクティヴ美学の研究とメディア横断的な映像を制作している。主な制作プロジェクトに,「リヨンビエンナーレ1995」、CD-ROM書籍「ルソーの時」(2000)、「物質性ー非物質性 デザイン&イノベーション」(2016)。展覧会キュレーションとして「JOUABLE Genève-KyotoーParis 」(2004-2006) 。

**

◎研究・作品発表(2件)

作品「音響写真」─写真表現による音の視覚化について─
松浦拓也会員(名古屋学芸大学 メディア造形学部 映像メディア学科)

要旨:
美術作品においてのメディア領域間の在り方に疑問をもったことが私の作品制作背景にある。現代に於ける美術作品の多くは、多様なメディアの垣根を越えて構成されており、それは写真メディアも同様である。加工した写真はCGなのか。ディスプレイに出力したものや、プロジェクターで投影した写真は静止画の枠を超えた映像作品になってしまうのか。紙媒体に印刷したものだけが写真なのか。このように、写真は様々な領域を横断し得るメディアであるとも言えるのではないか。しかし、私はこうした現状に否定的ではない。様々なメディアが混在する世の中だからこそ新たな作品表現が生まれているのではないだろうか。私の作品制作でのベースとして、「写真メディアを介す」という方法論がある。2015年より継続して「音響写真」シリーズを制作、研究している。本作品で組み合わせ、制作している技法クラドニ図形(サイマティクス)および、フォトグラムについての先行作品やこれまでに制作したシリーズを踏まえ解説する。記録性特性のある写真を使って、目には見えない音の軌跡を提示する。また、昨年開催した個展「Sonic Photogram –音の定着-」について報告する。

「移動型ラボにおけるメディア表現」
河村陽介氏(MOBIUM/名古屋工業大学大学院工学研究科社会工学専攻博士後期課程)

要旨:
移動型ラボ(モバイルラボラトリー)は英国、米国、アフリカなどで運用されている特殊設備を備えた移動型の研究室の総称である。米国ではその用途のひとつとして設備や教員が不十分な遠方の学校に専門家とともに出向き、STEM或いはSTEAMなどの科学教育を普及するための活動が行われ、教育の地域格差を埋める方法として活用されている。
移動型ラボは環境調査を主とした科学教育用途のものと、FAB機器などの工房施設を備えた創作活動用途のものに大別される。本発表で紹介する移動型ラボ「MOBIUM」は位置情報や加速度、環境情報などを扱ったメディア表現に関する創作活動に特化しており、都市部、山間部問わずワークショップや展示活動を行なっている。2005年から実施している過去のプロジェクト事例やその制作プロセス、また現地の環境や住民との関わりなどについて解説し、創作活動、特にメディア表現における移動型ラボの有効性を示したい。

**

◎会場へのアクセス
*名鉄犬山線「徳重・名古屋芸大」駅より東へ徒歩10分
*車で来場する場合は会場1号館北側の来客駐車場に停めてください
(許可申請・記名の必要はありません)
http://www.nua.ac.jp/outline/access/index.html
http://www2.nua.ac.jp/campusmap/shikatsu.html#facility01

以上