新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、 2020年3月10日に予定しておりました 日本映像学会中部支部 第3回研究会は中止となりました。
2019年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第3回研究会
日時:2020年 3月 10日(火)13:30-
会場:名古屋学芸大学
(愛知県日進市岩崎町竹ノ山57)
新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、 2020年3月10日に予定しておりました 日本映像学会中部支部 第3回研究会は中止となりました。
2019年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第3回研究会
日時:2020年 3月 10日(火)13:30-
会場:名古屋学芸大学
(愛知県日進市岩崎町竹ノ山57)
2019年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第2回研究会
日時:2019年12月21日(土)13時30分より
会場:椙山女学園大学(星が丘キャンパス)
文化情報学部メディア棟128教室
(〒464-8662 名古屋市千種区星が丘元町17番3号)
要旨:
ふるくはマリノフスキーの頃から人類学者たちは、フィールドワークの中で「イメージ」
を記録するために、写真や映像を活用してきた。「厚い記述」によって人類学者の立ち位
置や関係性が注視される以前に、映像人類学ではすでにルーシュによって「カメラの人格
化」が提示されていた。カメラ(と撮影者)がそこに在ること(撮影すること)がその場
に影響を及ぼし、時にカメラの前の人々をトランス状態にする。カメラが収める「真実」
とはそうした撮影者と被写体の共犯関係によって作られたものであるとされる。
本報告者は、2000年からバングラデシュの農村でカメラを持ってフィールドワークを継
続してきた。当初の調査対象は「子ども」であったが、同じ対象を追い続けているうちに
彼ら彼女らは「子ども」ではなくなった。最初、カメラは子どもたちと私の間の「遊び道
具」であったが、彼らが変化するに連れて、私の撮影に対する彼らの態度もカメラの存在
も変わっていった。また、子どもの頃から撮り貯めてきた映像は彼ら彼女らの記録となり
、私と彼らとの関係の変化をも示し、時折一緒に見返すことで、互いの再帰的解釈を生み
出す。本報告では、1人の少女=女性と私の記録映像を事例に紹介しながら、自己と他者、
過去と現在が交差するところに導かれるイメージ理解、それを助ける映像実践について考
えてみたい。
南出 和余(みなみで かずよ)氏 プロフィール
1975年生まれ。現在、神戸女学院大学文学部英文学科准教授。
神戸女学院大学大学院人間科学研究科(修士)、総合研究大学院大学文化科学研究科(民博)(博士)。専門は、文化人類学、映像人類学。
著書に、『メディアの内と外を読み解く―大学におけるメディア教育実践-』(南出和余、木島由晶編著、せりか書房、2018年)『「学校化」に向かう南アジア―教育と社会変容―』(押川文子、南出和余編著、昭和堂、2016年)『「子ども域」の人類学―バングラデシュ農村社会の子どもたち―』(南出和余、昭和堂、2014年)『フィールドワークと映像実践―研究のためのビデオ撮影入門―』、(南出和余、秋谷直矩、ハーベスト社、2013年)等。映像作品にXX Parnu International Documentary and Anthropology Film Festival Award for Best Scientific Documentary 「Circumcision in Transition(割礼の変容)」(2006年、36分)等がある。
◎研究発表(2件)
サークルとしてのアニメーション文化—1960~1980年代の日本を中心に
林 緑子 会員(シアターカフェ 運営)
名古屋大学人文学研究科博士課程前期課程
要旨:
従来の日本のアニメーション研究は商業アニメと著名作家の短編作品の分析が中心であり、アニメーションのファン文化研究では商業アニメのファンとしてのオタクの分析が中心だった。だが、オタクという呼称の成立以前の1960年代後半から、 国内外で制作された様々なアニメーションを好むファンの動向が国内で起き、国内各地にアニメーションサークルが発足している。彼ら・彼女らは受容・上映・制作の側面における活動を通じて、商業アニメとも関連しながら、オタクとは異なる文脈で日本のアニメーション文化を支えてきた。この事実はこれまでの研究史からは見過ごされている。
本発表では、アニメーションサークルの特徴を明らかにした上で、この活動を日本のアニメーション研究とファン文化研究の文脈に位置付ける。これにより従来の研究とは異なる観点から、アニメーション文化史の研究に貢献したい。
意味の発掘としての「取材」—事物への意味付けの変化を提示する作品とその制作プロセスについて
片山 一葉 会員(美術作家)
愛知学泉大学、愛知淑徳大学、大同大学、名古屋大学、非常勤講師
/愛知県立芸術大学教育研究指導員
要旨:
近年、作品の設置される環境にまつわる情報から展開されるサイトスペシフィックな芸術作品は、国際美術展や各地のアートプロジェクトの広がりとともに、確立された表現の一種となった。そのような作品は、何らかの形でその場所に関する情報を収集し編集することで成立するが、私の制作活動においても、ある場所または人物について取材を行い、そこで得たモノ・映像・言葉といった素材をもとにインスタレーションを構成することにより、日常の中で意識されることなく存在の意味が失われつつある事物を採り上げ見つめ直すことを目的としている。また、上記の制作における方法論を用いて、ギャラリーや美術館のイベントとして、日常生活とは違った事物の観察手法を体験するワークショップも行っている。
本発表では、「取材(そしてその結果の提示)という行為による、事物への視点や意味付けの変化」を「意味の発掘」として捉えることを試みながら、今までに制作した作品・実施したワークショップの事例を報告する。
◎補足情報
日本映像学会中部支部 幹事会
12:50-13:20(場所:文化情報学部メディア棟128教室)
◎会場へのアクセス
椙山女学園大学(星が丘キャンパス)
http://www.sugiyama-u.ac.jp/univ/campus/map/hoshigaoka/
星ヶ丘キャンパスまでは、地下鉄東山線「星ヶ丘」下車、6番出口より徒歩5分。
会場は、上記リンク先のD棟(文化情報学部メディア棟)。
正門から直進、右側の赤い柱がある棟の中に入り階段を上がった1階。
2019年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第1回研究会
日時:2019年8月27日(火)13時30分より
会場:中京大学 豊田キャンパス
16号館4階グループ学習室C
(470-0393 愛知県豊田市貝津町床立101)
要旨:
1950年代から70年代にかけての都市や経済の成長期には数多くの公共建築が建設された。当時はスピーディかつ効率よく公共建築を建設し、新たな住民や利用者を受け入れる必要があったため、標準設計という手法がとられ、各地に類似の形態をした公共建築が建設された。例えば、学校建築がどこへ行っても大体同じなのはそのためである。しかし現在は、既成市街地の中で物理的、機能的、社会的寿命を迎えた既存の公共建築を建て替えるため、現在の利用者や地域関係者との協議が計画上、避けて通れない。特に学校建築は、基礎自治体が保有する公共建築の中で面積上、多くを占めるだけでなく、学校は日本の地域コミュニティの中で社会文化的にも空間的にも重要な位置を占めるため、建て替えの計画・設計における合意形成のあり方や方法は大きな課題である。その中で、松阪市鎌田中学校の校舎建替計画においては、設計案の完成予想図や模型、3次元CAD等とともに、単眼VRが中京大学准教授の曽我部哲也氏によって制作され、地元住民に体験してもらうという試みを行った。デザインを共有するためのあらたなメディアやツールは、建築設計だけでなく教育自体のあり方を大きく変えていく可能性がある。鎌田中学校での実例をもとに、建築と映像のこれからの接点について議論したい。
小松尚(こまつ ひさし)氏 プロフィール
名古屋大学大学院環境学研究科准教授。博士(工学)。一級建築士。1966年生まれ。1992年名古屋大学大学院工学研究科建築学専攻前期課程修了。2006年から現職。専門は建築計画。著書(共著、分担執筆)に『「地区の家」と「屋根のある広場」』(小篠隆生共著、鹿島出版会、2018年)、『Towards the Implementation of the New Urban Agenda』(Springer, 2017)、『まちの居場所』(東洋書店、2010年)、『地域と大学の共創まちづくり』(学芸出版社、2008年)など。市民協働による公共建築計画・運営への指導、助言として、いなべ市石榑小学校(2002年~:公共建築賞優秀賞)、亀山市川崎小学校(2012年~)、松阪市鎌田中学校(2015年~)など。
◎研究発表(2件)
Volumeの生成によるメディア表現
加藤 良将 会員(名古屋芸術大学講師)
要旨:
私の作品に共通することの一つとして、Volumeの生成による驚きがある。それは、私の興味ある作品がキネティック・アートやライト・アートにあることによるかもしれない。簡単に作品を紹介すると、【White Lives on Speaker】(2007、Ars Electronica PRIX 2007)では、デンプンを水で溶いた液体をスピーカによる振動によって起こるダイラタンシー現象を用いて、観客は白い液体が生きているかのような動きを見ることができ、触れることによって不思議な体験ができる。
また、【Rokuro-2】(2008、 第15回学生CGコンテスト/デジタル・スタジアム)や【micRokuro】(2010)では、光ファイバーを高速に回転させることによって出来上がる球体を手で触れることによって、陶芸における轆轤のように自由に形態を変えることができる。それはまるで触れることのできない光を掴んでいるような体験である。
どちらも動いていない状態では不定形な液体や一筋の線状であるため、人が触れて体験できるようにするためにVolumeを作成し、触れることによって普段味わうことができないような不思議な作品となっている。今回はこれまでに行ってきた作品制作と展示の報告を行う。
「都市デザインとしての小規模な美術教育の仕組み「長者町スクール・オブ・アーツ」の試みと必要性について」
山田 亘 会員(写真家/メディア表現)
PAC代表 アートセンター[Yojo-Han] ディレクター
長者町スクール・オブ・アーツ代表
名古屋芸術大学、名古屋学芸大学、名古屋造形大学非常勤講師
要旨:
一般的にみられる美術センターは通常大型の設備を持ち、多数のコンテンツを多くの人数に手渡すことを常としており、特に都心部では施設そのものの維持継続に多くのエネルギーや公的な予算を必要とし、自立するものは少ない。2012年に発足した、持続可能で経済的に自立することが容易な小規模美術教育のための私立アートセンター[Yojo-Han]の試みは、アーティスト達の小規模組織による社会人に向けた先進的な美術教育のための、一つのローモデルであり、2018年に名古屋都心部に登場したアートコレクティブ「長者町スクール・オブ・アーツ」へとその構造の可能性を繋げ、拡げている。本発表では、2009年から始まったプロジェクトベースの新聞編集部を運営する作品から、創造性教育のための仕組みを都市デザインに組み込むアートセンター[Yojo-Han]への発展、センターの写真映像スクールPACellの試みについてや、長者町スクール・オブ・アーツの本年度のプロジェクト「ART FARMing」につながる流れを報告し、社会人向けの上質で小規模な美術教育の必要性について解説する。
◎補足情報
日本映像学会中部支部 幹事会
12:50-13:20(場所:16号館4階グループ学習室C)
日本映像学会中部支部 支部総会
16:30-(場所:16号館4階グループ学習室C)
◎会場へのアクセス(中京大学豊田キャンパス)
https://www.chukyo-u.ac.jp/information/access/h2.html
<お車でお越しの方>
学内駐車場をご利用ください。(無料)
守衛門にて「映像学会中部支部会参加のため」とお知らせください。
・東名高速道路 東名三好ICから約20分
・名古屋瀬戸道路 長久手ICから約20分
<公共交通機関でお越しの方>
・名鉄豊田線浄水駅からスクールバスで約10分
・愛知環状鉄道貝津駅から徒歩15分
<スクールバス運行案内>
https://www.chukyo-u.ac.jp/support/studentlife/a7.html
中部支部では、2019 年度の研究会を下記のように計画しています。
・中部支部第1 回研究会:8月27 日(火)|会場:中京大学
(研究発表1,2件、招待講演1件、予定)
研究会後、同会場にて総会を開催。
・中部支部第2 回研究会:11月もしくは12 月(日程調整中)|会場:椙山女学園大学
(研究発表1,2件、招待講演1件を予定)
・中部支部第3 回研究会:3 月(日程調整中)|会場:名古屋学芸大学
(研究発表1,2件、学生作品プレゼンテーション を予定)
2018年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第3回研究会
日時:2019年 3月 1日(金)13:30-
会場:名古屋造形大学 C棟(C601)
(愛知県小牧市大字大草6004)
◎スケジュール
-13:30-13:35 開催校挨拶
-13:35-14:00 研究発表(1件)
-14:15-17:40 学生作品プレゼンテーション
-17:50- 学内にて懇親会
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◎研究発表
「休日映画」─ネットワーク上における短編映像群による映像表現の試みについて─
齋藤 正和 会員(名古屋学芸大学 映像メディア学科 専任講師)
要旨:
「休日映画」は2009年から続けてきた短編映像群によるプロジェクトである。本作品は、スクリーンやTVモニターによる視聴ではなく、PC上で動画共有サイトにアップロードした映像を視聴することを想定して制作をはじめ、現在もアップデートし続けている。この10年間、映像の制作・視聴環境の変化には目紛しいものがあった。一眼レフカメラによる映像制作は一般化し、また、ネットワークを介してのPCやスマートフォンによる映像視聴もすっかり定着した感がある。本発表では、制作開始時のメディア環境に触れながら作品の制作背景を述べることで、現在の映像環境について検討することを試みたい。
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◎学生作品プレゼンテーション
◉名古屋造形大学
『/CENTUM (パーセンタム)』|プロジェクションマッピング
伊吹 悠、後藤 弘樹、酒井 久栄、出口 暁与、辻 ひかる
(造形学部 デジタルメディアデザインコース4年)
◉名古屋芸術大学
『BRAIN LIFE』|シングルチャンネル
高橋 陸(デザイン学部 デザイン学科 メディアデザインコース4年)
『あたたかさ ー作り手から買い手へー』|シングルチャンネル
加藤亜実(デザイン学部 デザイン学科 メディアデザインコース4年)
◉名古屋学芸大学
『生まれてくる君へ』|インスタレーション
成田 開(映像メディア学科 インスタレーション領域 4年)
『わたしが知っている本当のこと』|写真
半澤 奈波(映像メディア学科 フォト領域 4年)
『ユメみばなにうつつ』|シングルチャンネル
増田 優太(映像メディア学科 アニメーション領域 4年)
(休憩 )
◉椙山女学園大学
『観光・絶景〜愛知県の四季と魅力〜』|シングルチャンネル
市川 鼓乃美(文化情報学部 メディア情報学科4年)
『生理痛ちゃん』|シングルチャンネル
大崎 彩花(文化情報学部 メディア情報学科4年)
『なくしてません』|シングルチャンネル
高橋 佑果(文化情報学部 メディア情報学科4年)
◉情報科学芸術大学院大学
『Processing を用いた深層学習の可視化の試み』|インスタレーション
津曲 洸太(メディア表現研究科 修士1年)
『displayed_scape』|インスタレーション
小濱 史雄(メディア表現研究科 修士2年)
『multi-faceted』|インスタレーション
長野 櫻子(メディア表現研究科 修士1年)
◉愛知淑徳大学
『ジェンダーと若者 〜インタビューにもとづくドキュメンタリー映像〜』
|シングルチャンネル
坂下 可蓮(メディアプロデュース学部 メディアコミュニケーション専修4年)
『古民家×プロジェクション「こみくしょん」』|ソーシャルアート
森本 真由、猪飼 みちる、成田 彩、 野々山 慧音
(創造表現学部 メディアプロデュース専攻3年)
◉愛知県立芸術大学
『Elephant’s』|シングルチャンネル
池田夏乃(美術学部 デザイン・工芸科デザイン専攻 メディア領域4年)
『Wire Frame Architecture』|インスタレーション
石川 陽菜(美術学部 デザイン・工芸科デザイン専攻 環境領域4年)
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◎会場へのアクセス
https://www.nzu.ac.jp/about/access/
<お車でお越しの方>
学校駐車場をご利用ください。(無料)
・東名高速道路 春日井ICから約15分
・中央自動車道 小牧東ICから約10分
<公共交通機関でお越しの方>
・JR中央本線春日井駅からスクールバスで約20分
・JR中央本線高蔵寺駅からスクールバスで約20分
・名鉄犬山駅からスクールバスで約35分
・桃花台センターバス停からスクールバスで約7分
https://www.nzu.ac.jp/school_bus/
<時刻表>
https://www.nzu.ac.jp/school_bus_vacation/
以上
2018年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第2回研究会
日時:2018年12月22日(土)13時~16時半
会場:名古屋芸術大学東キャンパス1号館7階アセンブリーホール
(〒481-8503 愛知県北名古屋市熊之庄古井281番)
※アクセスの詳細は、文末に記載しています。
「視覚メディアのレイヤー ─イメージ,身体,記録」
現代,視覚イメージが私たちのまわりに溢れている。いや,そう言うことすら忘れてしまうほどに,生活に浸透している。イメージをめぐる,見いだし,撮影し,編集し,そして記録するという作業は,すでに独立した行為のリニアな連続とは想定できない。カメラアプリがファインダースクリーンにあらかじめ予測される像を結ぶように,イメージは,時と場所を横断して機能する幾重ものメディアのなかで,生成する。本研究会では,そうした事態を,イメージに寄り添う身体ないしは行為から,あるいはメディアと記録との関係において,読み解き,提示することを試みる。
2組3人のゲストを迎える。酒井健宏氏は,映像作家として映画制作する一方,名古屋芸術大学ほかで映像関係の授業を担当している。近刊の『身体化するメディア/メディア化する身体』(西山哲郎・谷本奈穂編著)では,「多層化する視覚メディアと身体」を著した。真下武久氏と竹内創氏は,それぞれ大学で研究・教育にたずさわるとともに,個人で,またユニットの一員としてもアーティスト活動を展開している。近年では,ともに「物質性ー非物質性 デザイン&イノベーション」展で発表した。
◎スケジュール
-13:00-13:10 開催校挨拶
-13:10-13:40 研究発表:松浦拓也会員
-13:50-14:20 作品発表:河村陽介氏
-14:20-14:40 休憩(*真下武久氏・竹内創氏による作品「Immaterial Archive」鑑賞)
-14:40-15:30 招待講演:酒井健宏氏
-15:40-16:30 招待講演(展示含む):真下武久氏+竹内創氏
-17:00- 懇親会(会費3000円,銘軒=研究会会場より徒歩5分)
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◎招待講演(2件)
「つながる/かさなる視覚メディアと身体」
酒井健宏氏
要旨:
このあいだテレビでやったアニメの映画をビデオに録ったからパソコンで見る。ありふれた発言のように聞こえるが、 本来これは実に複雑なことだ。視覚メディアは多様化(multi-)かつ多層化(layered)している。今日このような状況をもたらしているもっとも大きな要因が、デジタル技術に基づく視覚メディアの普及によるものであることに議論の余地はないだろう。今や私たちはパソコンやスマホに表示される静止画像を「写真」と言い、デジタルデータで上映される動画像を「映画」と呼んでいる。この複雑さと直面しながら視覚メディアを研究対象とするには一体どのような視点が有効であろうか。本講演では、視覚メディアの歴史において生じた複数の「写真から映画へ」に注目することで、その視点の一つを提供したい。とりわけ視覚イメージの加工(いわゆる編集や合成)の様態とその歴史的変容に着目し、それぞれの「写真から映画へ」が(イメージとして記録された)身体をどのように加工および表象してきたのかを例に挙げながら示したい。
酒井健宏(さかい たけひろ)氏 プロフィール
1977年生まれ。映像作家・映画研究。 名古屋大学大学院情報科学研究科博士後期課程中退。98年に大学の映画サークルに所属したことがきっかけで制作を開始。07年『キッス占い』がTAMA NEW WAVEコンペティション部門入選。11年『CSL/タカボンとミミミ』がうえだ城下町映画祭自主制作映画コンテスト審査員賞受賞(大林千茱萸賞)。14年『ハチミツ』が第1回LOAD SHOWコンペティション入選。16年、名古屋市港区にて地域映画『右にミナト、左にヘイワ。』を制作・監督。近著に『身体化するメディア/メディア化する身体』(分担執筆)。
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「物質性―非物質性 デザイン&イノベーション」展 あるアーカイヴの試み
真下武久氏 + 竹内創氏(合同発表)
要旨:
「物質性―非物質性 デザイン&イノベーション」展(京都dddギャラリー/2016)は、1985年にパリのポンピドゥー・センターで開催された「非物質的なもの(Les Immatériaux)」展(ジャン=フランソワ・リオタール監修)へのオマージュである。本研究は、物質性をキーワードに展覧会アーカイヴの「ある試み」を行う。我々は非物質的な環境に取り囲まれて生活している。そうした中、今改めて「物質性」が問われることになってきた。“印刷物に収まりきらない作品の記録と再表現は可能であるか?”京都展に関わったことで展覧会のアーカイヴというものを考えるきっかけになった。「非物質的なもの」展(1985)のカタログは印刷物ではあるが、ページが綴じられていない。カード式と呼ばれるものになっており、作品同士の関連性を読者が自由に見つけられるよう意図的に作られている。このカタログをモデルにノンリニアに体験できるアーカイヴができないかと考えた。参加した作家のイニシアルを使ってポスターをデザインすることから始め、このポスターをインターフェイスとして展覧会の風景、作品、情報を検索する装置として作り上げている。今回のアーカイヴは、読者がポスターの前でタブレット端末(iPad)を操作し、AR(拡張現実)技術によって展示作品を非物質的に浮かび上がらせることになる。
コンセプト: 竹内 創
デザイン: ニコール・シュミット
サウンドデザイン: 外山 央
プログラミング: 真下 武久
真下武久(ましも たけひさ)氏 プロフィール
1979年生まれ。成安造形大学准教授。 IAMAS(情報科学芸術大学院大学)修了。日常の物理的な制約をインタラクティブアートを通して解決し、新しい体験を作り出す。蒸気に映像を投影したインタラクティヴな作品「Moony」(2004)は、アルスエレクトロニカにて “the next idea”部門で受賞。主な展覧会に『Media City Seoul」(2005)、「Gwangju Biennale」(2006) 、「Shenzhen Ink Painting Biennale 」(2008)、「Sundance Film Festival」(2011)など。竹内創(たけうち はじめ)氏 プロフィール
1968年生まれ。ニューメディア研究/アーティスト。名古屋芸術大学准教授。 パリ第8大学 DEA 第三期高等教育課程、フランス国立高等装飾美術学校 Post-Diplôme 修了。インタラクティヴ美学の研究とメディア横断的な映像を制作している。主な制作プロジェクトに,「リヨンビエンナーレ1995」、CD-ROM書籍「ルソーの時」(2000)、「物質性ー非物質性 デザイン&イノベーション」(2016)。展覧会キュレーションとして「JOUABLE Genève-KyotoーParis 」(2004-2006) 。
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◎研究・作品発表(2件)
作品「音響写真」─写真表現による音の視覚化について─
松浦拓也会員(名古屋学芸大学 メディア造形学部 映像メディア学科)
要旨:
美術作品においてのメディア領域間の在り方に疑問をもったことが私の作品制作背景にある。現代に於ける美術作品の多くは、多様なメディアの垣根を越えて構成されており、それは写真メディアも同様である。加工した写真はCGなのか。ディスプレイに出力したものや、プロジェクターで投影した写真は静止画の枠を超えた映像作品になってしまうのか。紙媒体に印刷したものだけが写真なのか。このように、写真は様々な領域を横断し得るメディアであるとも言えるのではないか。しかし、私はこうした現状に否定的ではない。様々なメディアが混在する世の中だからこそ新たな作品表現が生まれているのではないだろうか。私の作品制作でのベースとして、「写真メディアを介す」という方法論がある。2015年より継続して「音響写真」シリーズを制作、研究している。本作品で組み合わせ、制作している技法クラドニ図形(サイマティクス)および、フォトグラムについての先行作品やこれまでに制作したシリーズを踏まえ解説する。記録性特性のある写真を使って、目には見えない音の軌跡を提示する。また、昨年開催した個展「Sonic Photogram –音の定着-」について報告する。
「移動型ラボにおけるメディア表現」
河村陽介氏(MOBIUM/名古屋工業大学大学院工学研究科社会工学専攻博士後期課程)
要旨:
移動型ラボ(モバイルラボラトリー)は英国、米国、アフリカなどで運用されている特殊設備を備えた移動型の研究室の総称である。米国ではその用途のひとつとして設備や教員が不十分な遠方の学校に専門家とともに出向き、STEM或いはSTEAMなどの科学教育を普及するための活動が行われ、教育の地域格差を埋める方法として活用されている。
移動型ラボは環境調査を主とした科学教育用途のものと、FAB機器などの工房施設を備えた創作活動用途のものに大別される。本発表で紹介する移動型ラボ「MOBIUM」は位置情報や加速度、環境情報などを扱ったメディア表現に関する創作活動に特化しており、都市部、山間部問わずワークショップや展示活動を行なっている。2005年から実施している過去のプロジェクト事例やその制作プロセス、また現地の環境や住民との関わりなどについて解説し、創作活動、特にメディア表現における移動型ラボの有効性を示したい。
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◎会場へのアクセス
*名鉄犬山線「徳重・名古屋芸大」駅より東へ徒歩10分
*車で来場する場合は会場1号館北側の来客駐車場に停めてください
(許可申請・記名の必要はありません)
http://www.nua.ac.jp/outline/access/index.html
http://www2.nua.ac.jp/campusmap/shikatsu.html#facility01
以上
2018年度|中部支部|第1回研究会
日本映像学会中部支部第1回研究会は、名古屋大学映像学分野・専門による国際ミニカンファランス「ワールド・シネマの新地平」との合併企画として開催します。
日時:2018年11月10日(土)15:10より(国際ミニカンファランスは10:00より)
会場:名古屋大学(東山キャンパス)文系総合館7階カンファレンスホール
(〒464-8601 愛知県名古屋市千種区不老町)
※終了後、学内にて懇親会
◎招待講演
Transnational Cinema or World Cinema: Why Filmmakers Find Themselves Serving Two Masters
トランスナショナル・シネマ、またはワールド・シネマ: 映画制作者はどうして二人の主人に仕えることになるのか
トマス・エルセサー氏 (アムステルダム大学名誉教授)
Abstract:
My lecture proposes the term “transnational cinema” and considers its typical features from several different perspectives: first, as a notion that competes with other terms which also want to characterise non-Hollywood cinema, such as ‘world cinema’, ‘independent cinema’, ‘accented cinema’, ‘peripheral cinema’. Despite being itself a problematic concept, to my mind, transnational cinema best represents the situation of contemporary filmmaking under conditions of globalisation. Second, transnational cinema highlights the challenges, contradictions and possibilities inherent in its presence at the main site of encounter and exchange: the international film festival circuit. Third, transnational cinema helps us understand the changes brought by the digital turn to non-Hollywood filmmaking, and thereby redefines what we mean today by ‘national cinema’, ‘auteur cinema’ and the ‘cinema of small nations’.
※共催:国際ミニカンファランス「ワールド・シネマの新地平」(名古屋大学映像学分野・専門)11月11日(日)10時より、エルセサー先生自作の映画作品も上映されます。
トマス・エルセサー氏プロフィール
Thomas Elsaesser / アムステルダム大学名誉教授 50年間のフィルム・スタディーズの歴史のなかで、もっとも影響力のある研究者の一人。数々の受賞に加え、その功績はオランダ獅子勲章(2006年)やブリティッシュ・アカデミー客員会員(2008年)で認められている。日本語に訳されているものに、『現代アメリカ映画研究入門』(共著)水島和則訳、「響きと怒りの物語 ファミリー・メロドラマへの所見」石田美紀・加藤幹郎訳『「新」映画理論集成 1 歴史/人権/ジェンダー』所収など。https://en.wikipedia.org/wiki/Thomas_Elsaesser
◎研究発表(2件)
ビヨンド・シネマ:現代美術におけるスクリーン・プラクティス
馬定延(マ・ジョンヨン)会員(明治大学特任講師)
要旨:
現代美術におけるスクリーンは単なる上映装置を超えて、展示環境の物理的条件を構成する作品の一部であり、それゆえ二次元の平面よりは三次元の空間概念として捉える必要がある。本研究発表では、拡張されたスクリーンの概念を通じて、ホワイト・キューブとブラック・ボックスという展示空間とそれにまつわる美術の制度、イメージの生産、複製、共有、記録、保存に関わるテクノロジーと芸術表現の歴史、そしてそれらによって変容する観客性について考察する。
テレビ時代のメディア環境と水俣病ドキュメンタリーの映像表現
―熊本放送初期作品を中心に
洞ヶ瀨 真人(中部大学人文学部非常勤講師)
要旨:
土本典昭の水俣関連ドキュメンタリー映画は、高度な表現を用いて目に見えない公害被害や犠牲者の苦悩を巧みに具象化していた(Marran 2017、 中村 2010)。だが、こうした映像表現は、1960~70年代のテレビドキュメンタリーも広く共有する特徴である。それらは、土本に匹敵する巧妙さで安易な被害者後援を超越し、水俣病事件が抱える複雑な内情を描出する。本発表では、地元の熊本放送作品を題材に、水俣病の社会背景とテレビ時代のメディア環境との狭間で、こうした新しいドキュメンタリー表現がどのように生じていたのかを考察したい。
◎補足情報(2件)
日本映像学会中部支部 幹事会 14:40-15:00(場所:7階705号室)
国際ミニカンファランス「ワールド・シネマの新地平」
11月10日(土):
10:00-10:15 開会の辞:藤木秀朗(名古屋大学)
10:15-12:15 名古屋-ウォリック・トーク
The World Cracked: Sinkholes, GIFs, and Cinematic Ecologies
/ 砕かれた世界:シンクホーGIF、映画的エコロジー
カール・シューノヴァー氏 (ウォリック大学)
Affect of Scale: Small-gauge Film and Tourism in Imperial Japan
/ 空間的スケールの情動:帝国日本における小型映画と観光
小川翔太氏(名古屋大学)
13:20-14:50 大学院生ワークショップ
11月11日(日):
10:30-12:00 映画上映『サン・アイランド』(2017)監督トマス・エルセサー
(監督との質疑応答)
◎会場へのアクセス
地下鉄名城線名古屋大学駅下車すぐ(東山キャンパス)
下記リンク先の地図B4(4) 文系総合館7階カンファレンスホール
http://www.nagoya-u.ac.jp/access-map/
中部支部では、2018 年度の研究会を下記のように計画しています。
・中部支部第1 回研究会:11 月10 日(土)|会場:名古屋大学
※国際ミニカンファランス合併企画
・中部支部第2 回研究会:12 月22 日(土)|会場:名古屋芸術大学
・中部支部第3 回研究会:3 月1日(金)|会場:名古屋造形大学
第1 回研究会は、名古屋大学映像学分野・専門による国際ミニカンファ
ランスとの合併企画として開催します。
2017年度 | 日本映像学会 中部支部 | 第3回研究会
日時:2018年03月05日(月)13:30より
会場:名古屋学芸大学 メディア造形学部棟 MCB210教室
(愛知県日進市岩崎町竹ノ山57)
◎スケジュール
-13:30~13:35 開催校挨拶
-13:35~14:00 研究発表:梶川 瑛里 氏| 重力と落下──『くもとちゅうりっぷ』の空間表象と運動表現
-14:05〜14:25 研究発表:村上 将城 会員| 作品『landschaft』について
-14:45~18:20頃 学生作品プレゼンテーション
-18:30頃より 学内にて懇親会
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◎研究発表
重力と落下——『くもとちゅうりっぷ』の空間表象と運動表現
梶川 瑛里 氏(名古屋大学大学院 文学研究科 博士課程前期課程)
要旨:
1943年に製作された日本アニメーションの金字塔と言われる『くもとちゅうりっぷ』の受容には、相反する二つの意見が見られる。一方で、戦時下の状況にも関わらずアニメーションの美的表現、詩情性を突き詰めたと称賛されるが、他方近年の研究では、そのキャラクター表象が戦時下のイデオロギーに基づいていると指摘される。いずれにしろ、このアニメーション作品の中で、空間や身体という物理的側面からどのような意味が構築されているのかという問題は軽んじられてきた。しかし、『くもとちゅうりっぷ』に見られる物理的な空間や身体は、戦前および戦時下のアニメーション文化を色濃く映し出しているのみならず、戦後日本のアニメーションにも継承される表現技法と技術を示している点で、極めて重要なものである。
本発表では、『くもとちゅうりっぷ』を題材として、そのリアリズム的表現に注目すると同時に、アニメーションにおける重力という空間表象や落下運動の分析を行う。ディズニーやジブリのアニメーション作品との比較も交えながら、『くもとちゅうりっぷ』の日本アニメーション史上における意義を空間表象と運動表現の側面から捉え直していく。
作品「landschaft」について
村上 将城 会員(名古屋学芸大学 映像メディア学科 専任講師)
要旨:
2006年より継続して写真作品「landschaft」を制作している。風景という言葉だけでは回収することのできない、人間の視覚によってとらえられる目の前の認識像 landschaft / 景観を写真で遺し、記録していく本作品を、これまでに制作したシリーズを踏まえて解説する。
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◎学生作品プレゼンテーション
◉愛知県立芸術大学
空想地図「ChaosFantasia」|Webコンテンツ
長井 惇之介(デザイン工芸科 デザイン専攻 4年)
◉名古屋芸術大学
アイデンティティー・Identity・我們的存在|映画|5m30s(本編: 40m)
施 亜希子(デザイン学科メディアデザインコース 4年)
Blooming|アニメーション|7m(本編: 14m)
佐原 由菜(デザイン学科メディアデザインコース 4年)
◉名古屋文理大学
workout in the summer|映像作品|3m3s
笹井 昭慶(情報メディア学科 2年)
◉椙山女学園大学
飴飴(あめあめ) ふれふれ|インタラクティブ・プログラム
FESやで|インタラクティブ・プログラム
大崎 彩花(文化情報学部メディア情報学科 3年生)
械獣の住む街 |アニメーション|52s
非常口|アニメーション|30s
わたしと傘の|アニメーション|1m45s
髙橋 佑果(文化情報学部メディア情報学科 3年生)
◉名古屋造形大学
暮れるトマトと朝日|映画|5〜10m(本編: 43m30s)
佐藤 佑一 + 山田 理奈 + 城山 紗織(デジタルメディアデザインコース 4年)
◉情報科学芸術大学院大学[IAMAS]
「私的映画の現在 物語を撮る/観ること」
me myself & us|シングルチャンネル作品|10m(本編: 75m)
高坂 聖太郎(メディア表現研究科 2年)
「時間軸を持つマンガ表現の研究」
パラサイトカラコン|シングルチャンネル上映(壁面ディスプレイ展示)|2m
女毛|シングルチャンネル上映(壁面ディスプレイ展示)|2m
尾焼津 早織(メディア表現研究科 1年)
◉愛知淑徳大学
「PICTRIP #え、ここ浜松なの?」
-写真を切り口とした浜松市の新たな魅力を伝える冊子の制作-|フリーペーパー A5サイズ32ページ
三岡 里穂(メディアプロデュース学部 メディアコミュニケーション専修 4年)
◉名古屋学芸大学
update|写真
樋口 誠也(映像メディア学科 フォト領域 4年)
げつまつのしゅーまつ|アニメーション|8m18s
増田 優太(映像メディア学科 アニメーション領域 3年)
私は追う|写真(平面展示、製本)
清水 邑有(映像メディア学科 フォト領域 4年)
「既視感を誘発する試み」
月と檸檬|インスタレーション
十二月の蛇|インスタレーション
サンタは窓からやってくる|インスタレーション
岩井 春華(映像メディア学科 インスタレーション領域 4年)
◎会場へのアクセス
公共交通機関でお越しの方
東山線「上社」駅と、鶴舞線「赤池」駅より、スクールバスが出ています。
両駅とも、大学までの時間は15分ほどとなります。
乗車時に、車掌に「学会での来校の旨」お伝えいただくことで、乗車できます。
スクールバスの時刻表は下記のPDFにてご確認ください。
https://www.nuas.ac.jp/download/2017bustimetable_spring.pdf
お車でお越しの方
はじめに正門入って左手にある「守衛室」にお寄りください。
来客用の駐車場位置について、守衛より説明があります。
https://goo.gl/maps/MCTeanvsB2F2
2017年度 日本映像学会 中部支部 | 第2回研究会
日時:2017年 12月09日(土)13:30より
会場:愛知県立芸術大学 新講義棟大講義室
(〒480‒1194 愛知県長久手市岩作三ケ峯1‒114)
◎スケジュール(予定)
13:30~13:35 開催校挨拶
13:35~14:00 研究発表:石井晴雄会員(愛知県立芸術大学准教授)
14:10~15:30 招待講演:ロラン・ミニョノー氏&クリスタ・ソムラー氏(リンツ美術工芸大学教授)
※終了後、学内にて懇親会(ティーパーティー)
◎招待講演(愛知県立芸術大学レジデンスアーティスト講演)
“Between audience participation and interaction: designing interactive art systems”
(観客の参加とインタラクションの狭間で:インタラクティブ・アート・システムのデザイン)
ロラン・ミニョノー氏& クリスタ・ソムラー氏(リンツ美術工芸大学教授)
ロラン・ミニョノー氏とクリスタ・ソムラー氏 / Laurent Mignonneau & Christa Sommerer略歴
国際的に活躍するメディアアーティスト、インタラクティブアートの研究者。米国と日本で10年にわたり研究と教育を行った後、オーストリアのリンツ美術工芸大学に教授としてに着任し、インタフェースカルチャー部門を開設した。二人は米国ケンブリッジのMIT CAV、米国イリノイ州シャンペインアーバナのベックマン研究所、東京のNTTインターコミュニケーションセンターの客員研究員、デンマークのオールボー大学のオベル客員教授、筑波大学の客員教授などを歴任、ロラン・ミニョノーはパリ第8大学のシャイア国際客員教授も歴任している。
これまで約30のインタラクティブな作品を制作し、スペインのマドリードで行われた2016年のARCO BEEP賞、1994年のGolden Nica Prix Ars Electronica Award、などをはじめとして数々の賞を受賞している。今年9月、愛知県立芸術大学芸術資料館にて開催した「インターフェイスとしての映像と身体」にて、[Protrait on the fry]の展示を行った。
◎研究発表
三ケ峯里山ハウス 自給自足からネットワーク、共生へ
石井晴雄会員(愛知県立芸術大学准教授)
要旨:
愛知県立芸術大学の石井研究室では2005年から大学の敷地内で農耕を始め、2007年から学生と家を建て始めるなど、自給自足的な暮らしを目指した活動を始めた。そして2008年から地域の住民と自然体験のワークショップを始め、その後地域の農ある暮らしのポータルサイトを制作し、地域の住民の交流イベントを開催するなど、ネットワークや地域の交流を含めた多様な活動をしている。本発表では学内で家を建てた経緯とその後の活動の推移を報告し、さらにその活動と1960年代以降のカウンターカルチャーとその後のサイバーカルチャーや共生の思想との関連について考察する。
農耕や家の建設、自然体験のワークショップなどの一連の活動を始めた当時は、2006年にアル・ゴア元アメリカ合衆国副大統領の映画『不都合な真実』(原題: An Inconvenient Truth)が公開され、地球温暖化などの環境問題がクローズアップされていた。また日本においても地域の過疎や環境破壊、森林の荒廃や農、食などの様々な問題が表面化していた。また当時はインターネットが高速回線に常時接続され、スマートフォンやSNSが普及しつつあり、誰もがどこでも多様なコミュニケーションができる様になりつつあった。そして都会や屋内の環境に縛られることなく、野外や地域、社会そのものが活動のフィールドになりつつあった。一方インターネット上には複製可能で再生可能な情報が氾濫し、複製不可能なモノや、再生不可能なその時その場でしかできないコトや体験が価値を持つ時代になりつつあった。
その様な時代背景の中で、環境やフィールドワーク、地域の特徴を生かしたモノやコトのデザインをテーマに、自然農による農耕や家の建築、地域の住民との自然体験のワークショップは継続された。しかし当初の自然農を中心とした自給自足的な暮ら 2011年に東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故があり、エネルギーを自給することの重要性を感じ、建てた家にソーラーパネルや風力発電機とバッテリーを備え付けて自然エネルギーの利用の実験を始めた。また震災を通して地域の住民同士の関係を作ることの必要性を感じ、地域の農ある暮らしのためのポータルサイトや地域の観光・交流のためのwebサイトを制作した。また地域の住民が集まって交流できる音楽とアートのイベントを始めるなど、当初めざした自給自足的な暮らしから、インターネットを使ったネットワークへ、そして地域住民の交流と共生をめざす方向へとテーマは推移していった。
これらの推移は結果として、1960年代以降のカウンターカルチャーの時代のコミューンなどが目指していた自給自足的な共生社会への理想が挫折し、若者は都市へ回帰し、ネットワークなどのサイバーカルチャーの中で共生を目指した流れと重なるものがある。しかし1960年代のカウンターカルチャーの時代に自給自足的な共生社会の理想が挫折した背景には、それらを実現するための実際的なツールが存在しなかったことがあげられる。しかしその後Whole Earth Catalogなどの雑誌のよって様々なツールへのアクセスが可能になり、パーソナルコンピュータなどの個人の能力を拡張するツールや、パソコン通信などのネットワークのためのツールが開発されていった。そして現在ではスマートフォンやインターネット、様々なオンデマンド生産技術や自然エネルギー、電気自動車などの水平分散型の情報、生産、エネルギー関連の技術へのアクセスが可能になり、オープンやシェア、フィードバックといったサイバーカルチャーが目指した思想が社会の中で一般化しつつある。そして現在は1960年代に夢見た共生社会を、様々な現実的なツールを獲得しながら現実社会の中で実現して行く過程なのではないだろうか。その様な問いを元に、今後も地域において実践的に研究をおこなう。
◎会場へのアクセス
名古屋東部丘陵線リニモ「芸大通駅」徒歩10分
詳細は、下記のリンク先をご確認ください。
https://www.aichi-fam-u.ac.jp/guide/guide04/guide04-01.html