2013年度 中部支部第1回研究会

日時:2013年8月3日(土)14時~18時
会場:名古屋大学情報科学棟第1講義室
(名古屋市千種区不老町〒464-8601 地下鉄「名古屋大学」下車1番出口より西へ徒歩6分,下の地図のA4③)

■ スケジュール

14時         あいさつ
14時5分   研究発表3件(詳細は下記参照)
(15時35分-45分     休憩)
15時45分  remoによる講演(詳細は下記参照)
16時45分  ディスカッション
司会:宮下十有会員(椙山女学園大学文化情報学部メディア情報学科)
ディスカッサント:森田剛光会員(名古屋大学大学院文学研究科博士研究員),青山太郎会員(名古屋大学大学院国際言語文化研究科博士前期課程修了),稲垣拓也会員(名古屋大学大学院情報科学研究科博士前期課程)
17時20分  支部総会
17時30分  全学教育棟中庭のフェリーチェ・ヴァリーニ作品見学
18時          中華料理店「香蘭楼」で懇親会

——-

■ 講演者・タイトル

・ remo

「『野生のアーカイブ』の方法論

– オールド・ビジュアルメディアのアーカイブプロジェクト、AHA!の実践 -」

■ 講演要旨

近年、コミュニティの記録・記憶を次代に継承することの気運が、国内において急速に高まっています。それに伴い、博物館(美術館)・図書館・公文書館などに よって確立されてきた従来のアーカイブ構築の理論と実践の外側で、NPOなどを主体としたアーカイブの実践が草の根的に萌芽しています。
このような市民参加型のメディア実践は、東日本大震災を契機にますますその意義を高めており、わが国のアーカイブ実践における新しい潮流を形成していくことが予想されます。しかしながら、解決すべき課題やさまざまな障壁も山積しており、いまだ発展の途上にある状況です。
本講演では、2005年から大阪を中心に独自の発展を遂げてきたアーカイブプロジェクト・AHA!の取り組みを、[収集・公開・保存・活用]といった一連のワークフローのプロセスを辿りながら、当事者みずからご紹介します。そして、国内における諸処のアーカイブ実践における本事例の独自性を明らかにすると ともに、その可能性—あるいは「光の遅さ」について—を皆さんと分かち合いたいと思います。

■ プロフィール

AHA![ Archive for Human Activities / 人類の営みのためのアーカイブ ]
パーソナルな記録に潜在する社会的な価値に着目し、それらの収集・公開・保存・活用をめざす試み。「想起」という集合的行為を媒介とした「場づくり」の創出をめざし、独自の方法論でアプローチしている。remo[記録と表現とメディアのための組織]の事業の一つとして、2005年に始動。大阪を拠点にしつつ、全国各地で展開中。昭和30〜50年代にかけて一般家庭に普及した「8ミリフィルム」をアーカイブの対象にしている。アーティスト、デザイナー、研究者など、様々なバックグラウンドをもったメンバーによって運営されており、プロジェクトごとにチーム編成を流動的に行いながら展開している。

http://www.remo.or.jp

http://blog.livedoor.jp/daigo8miri/

http://coop-kitakagaya.blogspot.jp/

■ 研究発表者・タイトル

・森田剛光会員(名古屋大学大学院文学研究科博士研究員)

「映像活用によるミュージアムの再生:インドネシア・バリ島トゥガナン村の事例」

発表要旨:

本研究発表は、映像の活用を通じて、長年放置されていたミュージアムの再生をはかる目的で実施したプロジェクトの報告とその考察である。プロジェクトの対象であるトゥガナン・プグリンシンガン慣習村は、インドネシアのバリ島東部に位置する。1963年アグン山の噴火により、農業から観光業を生業に加えた。スハルト体制下の観光開発の流れに乗り、バリの「原住民」文化を残す村として広く宣伝され、国内外から観光客、文化研修の学生らが常に訪れる観光と共に生きる村落である。
しかし、村の文化を伝える方法を模索する中、村の長老らは、多数訪れる人々の質問の相手役に引っ張り回され疲弊していく。1990年代、その打開策として村内に博物館の建設計画が立ち上げられたが、バリ島の高温多湿の環境下で収蔵品の保管、管理の課題を解決出来ないまま、建物の建設途中で中断された。
2010年、村のリーダーの一人(司祭)を中心に、前計画の反省から現物展示の博物館ではなく、自分達の文化を映像として蓄積し、自分達の力で自文化を発信する情報センターとしての機能を重視したミュージアムの再生ができないかという話が持ち上った。村落の人々と共同で計画が練られ、その一つとして「バリ島の先住民村落デジタル・ミューアム建設にむけた若手人材育成プロェクト」 が、KDDI財団の助成を受け実施された。
発表者は、本プロジェクトに、映像技術者、映像人類学者として参画した。 本発表では、本プロジェクトでの村落内での組織作り、機材の選定、映像制作のフローを紹介すると共に、プロジェクトを通じて村落の人々の経験に注目し、レンズを通して自分の世界を見る経験と、ビデオカメラ、編集環境というツールを独自に持つことの意味を考察する。

・青山太郎会員(名古屋大学大学院国際言語文化研究科博士前期課程修了)

「知的探求の方法としての映像制作の可能性について

−宮永亮『arc』にみられる記憶の表象」

発表要旨:

デジタル技術の発達と普及によって私たちの映像体験は一見きわめて多様化したが、それにともなって日常に膨大な数の映像が氾濫し、それらを無批判に消費・再生産することで私たちの思考が抑圧されるという事態がしばしば指摘されている。
本発表は、思考を賦活するメディアとしての映像との関わり方を考察する契機として、映像を作る過程において生じる思考や知について論じる。
その参照項として本発表では映像作家の宮永亮の制作プロセスに注目する。宮永の制作手法は、ビデオカメラで撮影した実写映像を素材とし、PCでミックスやエフェクトを繰り返しつつ複数の映像レイヤーを重ね合わせるというものである。宮永が2011年に発表した『arc』(HD, 7min. 30sec.)は、震災前後の東北地方の風景などを重層的に組み合わせることで、それらの映像の間の断絶した関係を再構築している。それは記憶―イメージを見る側の人間の記憶だけでなく、イメージとしてみられる側の世界の記憶―のあり方へのビジョンをもたらしている。
発表者は宮永へのインタビュー調査によって、彼の制作プロセスを分析・構造化し、そこからいくつかの特性を抽出した。本発表では、それらがどのように制作者の思考に関わり、その制作プロセスを経ることでどのような知が創造されるかについて、『arc』イメージがもたらす記憶の問題を通じて論じる。

・稲垣拓也会員(名古屋大学大学院情報科学研究科博士前期課程)

「アーカイブ化された展覧会をARで体験する」

発表要旨:

過去におこなわれた展覧会を、ARを利用して実地にて体験できるシステムを開発している。システムでは、展覧会を仮想的に再現したものをiPadのカメラを通して見るとともに、展示と作品についての情報を表示する。記録誌や記録映像とは異なるアーカイブの受容の機会を提供することで、展覧会についての多様な理解をもたらし、新たな気づきを得ることを目的とする。


以上。

2012年度 中部支部第3回研究会

日時:3月8日(金)13時30分~17時45分
会場:名古屋学芸大学 メディア造形学部 MCB210教室
(愛知県日進市岩崎町竹ノ山57 Tel: 0561-75-2955(代表)
http://www.nuas.ac.jp)

【第一部】研究発表
13時30分~14時40分
・「占領期における「国民」の表象とアイヌ――映画『リラの花忘れじ』(1947)の改稿の分析を中心に」
名古屋大学大学院博士課程後期課程 大竹瑞穂会員
発表要旨:
1945年、ポツダム宣言の受託により、日本の領域と国民の範囲は大きく変化した。戦後、単一民族国家という国家像が想像/創造される中で、「帝国」の経験が、そのナショナルな表象に関わることが指摘されてきた。しかし、この「帝国」の経験が、国内の異民族であるアイヌの表象にも影響を及ぼしたことは、これまで論じられてこなかった。
映画『リラの花忘れじ』(1947年、原研吉監督)には、GHQの検閲提出稿を含む5本の脚本・脚本梗概が残されている。本発表では、特に、雑誌に掲載された脚本、及び同時代のシナリオ・ブームに注目することで、映画検閲や映画界内の戦争責任をめぐる葛藤から、映画とは異なる脚本が雑誌に掲載されたこと、『リラの花忘れじ』では、GHQの検閲により表現出来なった中国や朝鮮といった地域の代りに、北海道を舞台とすることで植民地支配に対する罪の意識が表明されたことを明らかにする。一方で、テクストの異同からは、同じ「国民」であるアイヌが抗議するという表象の背景に、敗北のトラウマ、つまりアイヌや他の被植民者の抵抗・独立に対する恐怖があったことが見えてくる。本発表では、これらの表象を通じて、どのように戦後「日本」のアイデンティティがつくり上げられたのか、明らかにしたい。

・「セル/デジタルをめぐるイメージの隔たり――テレビアニメとニューメディア」
名古屋大学大学院博士課程前期課程 坂井辰司氏(ゲスト発表)
発表要旨:
日本のリミテッド・アニメーション(アニメ)の現場にデジタル技術が導入されはじめたのは、1970年代以降のことだった。その後、約40年が経った現在、アニメでデジタル技術を用いることは、もはやあたりまえなこととなっている。本発表では、そのような状況下で制作・製作されるアニメが、デジタル(ニューメディア)技術とどのような関係を切り結んでいるのかと問う。この問いに応答するため、トマス・ラマールが、フェリックス・ガタリの「機械」概念を下敷きにしつつ行った一連のアニメ研究(「アニメ機械」論)に注目する。その中で提出した「隔たり」という概念と、これを発展させたマーク・スタインバーグの論文の批判的な検討を通して、セル/デジタルという「隔たり」を新たに概念化し、この「隔たり」が具体的にどのように操作されているかを、『ギルティクラウン』(2011-2012年)という一連のテレビアニメ・シリーズの分析を通して考察する。

【休憩】14時40分~15時(プレゼンテーションの準備・機材確認)

【第二部】学生映像作品プレゼンテーション(上映作品リストは最下段に記載)
15時~17時45分頃
参加校
・愛知淑徳大学
・静岡産業大学
・椙山女学園大学
・中京大学
・名古屋市立大学
・名古屋学芸大学
・名古屋芸術大学
・名古屋大学

【懇親会】18時15分〜
研究会会場にて。
会費:一般会員1500円、学生500円

【会場へのアクセス】
<公共交通機関でお越しの方>
東山線「上社」駅と、鶴舞線「赤池」駅より、スクールバスが出ております。両駅とも、大学までの時間は15分ほどとなります。乗車時に、運転手に「学会での来校」の旨お伝えいただき、書類に記載頂くことで、乗車できます。スクールバスの時刻表は下記のPDFにてご確認ください。
http://www.nuas.ac.jp/download/2012/2012bustimetable_spring.pdf
<お車でお越しの方>
はじめに正門の「守衛室」にお越し下さい。そこで、駐車許可証をお受け取りください。来客用の駐車場の位置について、守衛より説明があると思います。

——————————————————-

【学生映像作品プレゼンテーション・リスト】

●静岡産業大学

閃光アポトーシス|映像|2m10s|荒川 沙紀(情報デザイン学科3年)

i ro o bi|アニメーション|3m23s|池谷 佳子(情報デザイン学科3年)

レイニーレイディー|アニメーション|3m52s|鈴木 千恵(情報デザイン学科3年)

SOUND GAME|映像|2m17s|高山 なつき(情報デザイン学科3年)

※出力:DVDPC

●中京大学

Flowing|映像|1m40s|福原 浩太(情報理工学部メディア工学科 4 年)

SCAN |映像|3m|佐野 雄祐(情報理工学部メディア工学科 4 年)

MINE!|映像|2m|伊藤 安見(情報理工学部メディア工学科 4 年)

CABOTCG 映像|2m|小池 藍(情報理工学部メディア工学科 4 年)

Audio Font|インタラクティヴ・インスタレーション|加藤 貴晴(情報理工学部メディア工学科 4 年)

GHOST|オーディオ・インスタレーション|松田 智也(情報理工学部情報知能学科 4 年)

※出力:Blu-ray+PC

●名古屋学芸大学

リビング・ダイニング・キッチン|映像(映画)|15m|小林 亮公(映像メディア学科 映画ゼミ 4 年)

※出力:Blu-ray

●愛知淑徳大学

パラレルシティ|アニメーション|2m|丹羽 彩乃(メディアプロデュース学部2年)

COLOR|映像|5m|野中 麻利 , 安藤 優帆 , 金田 ひなた(メディアプロデュース学部3年)

union|映像|2m|上野 奏(メディアプロデュース学部3年)

トンチンカン|映像|3m|本多 結衣(メディアプロデュース学部3年)

DICTIONARY|映像|5mSTUDIES(愛知淑徳学生9人による映像制作チーム / メディアプロデュース学部1~3年有志)

※出力:PC

●椙山女学園大学

Sound of 名市大~醸し出す音から 72 日後の音色~|映像(ドキュメンタリー)|13m17s|藤原 弘華(文化情報学部 4 年)

子ペンギンをさがして|ストップモーションアニメーション|7m3s|石山 舞子(文化情報学部 4 年)

※出力:PC/iPad

●名古屋芸術大学

バルカロール|映像|23m|山田 麻由(デザイン学部デザイン学科メディアデザインコース 4 年)

Sphere|アニメーション|2m|羽根田 穂乃(デザイン学部デザイン学科メディアデザインコース 3 年)

※出力:PC

●名古屋市立大学

鳥の網膜像のシミュレーション映像|写真|片倉 理(芸術工学部デザイン情報学科 4 年)

cube?|アニメーション|2m30s|勝田 麻美(芸術工学部デザイン情報学科 4 年)

コミュニケーションを目的とするメディアアート作品|インスタレーション|平山 奈月(芸術工学部デザイン情報学科 4 年)

音声からタイポグラフィを生成するアプリ|アプリケーション|内田 達也(大学院芸術工学研究科 M2

※出力:PC

●名古屋大学

ボディトーク|映像|62m|中野 翠(大学院国際言語文化研究科メディアプロフェッショナル・コース M2

One-dimensional Cells #2|映像|規定の尺無し|杉村 紀次(大学院情報科学研究科複雑系科学専攻創発システム論講座 M2

※出力:PC

●静岡産業大学
閃光アポトーシス|映像|2m10s|荒川 沙紀(情報デザイン学科3年)
i ro o bi|アニメーション|3m23s|池谷 佳子(情報デザイン学科3年)
レイニーレイディー|アニメーション|3m52s|鈴木 千恵(情報デザイン学科3年)
SOUND GAME|映像|2m17s|高山 なつき(情報デザイン学科3年)
※出力:DVD+PC
●中京大学
Flowing|映像|1m40s|福原 浩太(情報理工学部メディア工学科 4 年)
SCAN |映像|3m|佐野 雄祐(情報理工学部メディア工学科 4 年)
MINE!|映像|2m|伊藤 安見(情報理工学部メディア工学科 4 年)
CABOT|CG 映像|2m|小池 藍(情報理工学部メディア工学科 4 年)
Audio Font|インタラクティヴ・インスタレーション|加藤 貴晴(情報理工学部メディア工学科 4 年)
GHOST|オーディオ・インスタレーション|松田 智也(情報理工学部情報知能学科 4 年)
※出力:Blu-ray+PC
●名古屋学芸大学
リビング・ダイニング・キッチン|映像(映画)|15m|小林 亮公(映像メディア学科 映画ゼミ 4 年)
※出力:Blu-ray
●愛知淑徳大学
パラレルシティ|アニメーション|2m|丹羽 彩乃(メディアプロデュース学部2年)
COLOR|映像|5m|野中 麻利 , 安藤 優帆 , 金田 ひなた(メディアプロデュース学部3年)
union|映像|2m|上野 奏(メディアプロデュース学部3年)
トンチンカン|映像|3m|本多 結衣(メディアプロデュース学部3年)
DICTIONARY|映像|5m|STUDIES(愛知淑徳学生9人による映像制作チーム / メディアプロデュース学部1~3年有志)
※出力:PC
●椙山女学園大学
Sound of 名市大~醸し出す音から 72 日後の音色~|映像(ドキュメンタリー)|13m17s|藤原 弘華(文化情報学部 4 年)
子ペンギンをさがして|ストップモーションアニメーション|7m3s|石山 舞子(文化情報学部 4 年)
※出力:PC/iPad
●名古屋芸術大学
バルカロール|映像|23m|山田 麻由(デザイン学部デザイン学科メディアデザインコース 4 年)
Sphere|アニメーション|2m|羽根田 穂乃(デザイン学部デザイン学科メディアデザインコース 3 年)
※出力:PC
●名古屋市立大学
鳥の網膜像のシミュレーション映像|写真|片倉 理(芸術工学部デザイン情報学科 4 年)
cube?|アニメーション|2m30s|勝田 麻美(芸術工学部デザイン情報学科 4 年)
コミュニケーションを目的とするメディアアート作品|インスタレーション|平山 奈月(芸術工学部デザイン情報学科 4 年)
音声からタイポグラフィを生成するアプリ|アプリケーション|内田 達也(大学院芸術工学研究科 M2)
※出力:PC
●名古屋大学
ボディトーク|映像|62m|中野 翠(大学院国際言語文化研究科メディアプロフェッショナル・コース M2)
One-dimensional Cells #2|映像|規定の尺無し|杉村 紀次(大学院情報科学研究科複雑系科学専攻創発システム論講座 M2)
※出力:PC

以上。

2012年度 中部支部第2回研究会

日時:12月7日[金]18時~20時30分(研究会後、懇親会)
会場:名古屋市立大学芸術工学部(会場,北千種キャンパス)、管理棟3階A305教室。http://www.nagoya-cu.ac.jp/sda/1015.htm

■スケジュール
18:00~ ・第一部:
ゲスト発表者:マイケル・クランドール(Michael Crandol)氏
        (ミネソタ大学博士後期課程/名古屋大学)
タイトル:「中川信夫監督『東海道四谷怪談』(1959年):怨霊と象徴」

・発表要旨
 「四谷怪談」は、日本で最も有名なゴースト・ストーリーゆえに、日本映画史上何度も作品化されてきた。その中で最も高く評価されているのは1959年に新東宝が製作・配給した中川信夫監督の『東海道四谷怪談』だが、それは一体なぜだろうか。
 まず、「四谷怪談」という怪談の由来と変化に関して簡単に説明し、次に、中川監督作品以前に作られたものについて検討し、最後に中川監督の『東海道四谷怪談』の分析を試みたいと思う。特に登場人物の中で、お岩の幽霊が、本物の恐ろしい怨霊としても、また、主人公の内面的な罪の象徴としても同時に描写される点に注目する。どのような方法で中川監督はその効果を獲得したのか。これについて考えるために、中川監督によるバージョンの三年前に同じ新東宝スタジオで撮影された毛利正樹監督の『四谷怪談』(1956年)と比較する。特にお岩の幽霊が出てくる場面の形式的要素を比較すれば、中川監督の『東海道四谷怪談』が単なる怪奇娯楽ではなく、興味深いホラー映画と呼ぶに値すると発表者は考える。

18:30~ 質疑応答
18:45~ 休憩

19:00~ ・第二部:
講演 中沢あき氏(映像作家、オーバーハウゼン国際短編映画祭キュレーター)
講演タイトル:「オルタナティブな映像作品と社会の関係及び、非商業的映画祭の役割ー独・オーバーハウゼン国際短編映画祭の一例」

・講演要旨
 1954年に創設されたオーバーハウゼン国際短編映画祭(Internationale Kurzfilmtage Oberhausen)は、様々な形式やジャンルを超え、短編映画の独自性を紹介してきた映画祭であり、また映像作品の前衛性や実験性に特に注目することで知られる。インターナショナル、キンダーフィルム、ドイツ国内など複数のコンペティション枠及び、テーマプログラム、作家特集プログラムなど、作品数にして約200本が5日間に渡って上映され、観客動員数は毎年1万7~8千人程。ドイツの映画史にも重要なマイルストーンであるオーバーハウゼン宣言が行われた映画祭でもある。
 カンヌやベルリンとは違い、決して商業的な方向性にあるとは言えないこの映画祭が、市や州からの大きな公立の助成を受けながら運営を続けているのは何故だろうか。ドイツの社会における文化思想をヒントとして、映画また芸術文化と社会の関係性を、欧州でのオルタナティブ文化を巡る現状に触れつつ報告する。

20:00~ 20:30 ディスカッション
21:00~ 懇親会

以上。

2012年度 中部支部第1回研究会

日時:2012年9月15日(土)15時~18時
会場:中部大学名古屋キャンパス[三浦記念会館]ホール
 (愛知県名古屋市中区千代田5-14-22 鶴舞駅名大病院口(北口)下車徒歩1分)
 (*お車でお越しの方は、2,3台ほどなら駐車スペースがあるようですので、事前にご連絡ください。)

■プログラム前半:
15:00~15:10 当番校挨拶
15:10~16:10 瀧健太郎氏(早稲田大学)ご講演
16:10~16:40 ディスカッション
16:40~17:00 休憩
■プログラム後半:
17:00~17:30 小川真理子会員(椙山女学園大学)による研究発表
17:30~17:45 ディスカッション
■支部総会:
17:45~18:00 (2011年度予算監査報告、理事会報告、2012年度中部支部事業計画ほか)
■終了後、懇親会(鶴舞駅周辺)

■ご講演について
ビデオ・アーティストとしてご活躍中の早稲田大学・瀧健太郎氏(早稲田大学川口芸術学校専任講師/映像学会会員)をお招きし、氏が昨年、制作されたドキュメンタリー映画『キカイデミルコト』のダイジェスト版の上映と、日本のビデオ・アートについてご講演いただきます。
http://www.netlaputa.ne.jp/~takiken/
http://kikai-de-mirukoto.vctokyo.org/tag/瀧健太郎/
■ご講演の概要:
現在の日本のメディア・アート状況を見渡すと、産業化しやすいエンターテイメント(ガジェット)としての「メディア・アート」か、欧米のアートマーケットを意識した「アート系映像作品」に、大別されてしまうのではないだろうか。しかし、ビデオメディアの登場した60-70年代の数々の試みには、本来そのようなフレームに閉じない豊穣さがあったことが窺える。つまり、かつてのビデオアートと呼ばれたものには、産業化やアートを意識しないからこそ、表現としてのある種の純粋性や、「見る」という哲学的考察が常に意識されていたのではないか。
「キカイデミルコト」の制作を通して瀧氏が改めて実感された60-70年代のメディア状況から、今後の映像やメディアを用いた表現の可能性とその意義についてお話しいただきます。

■研究発表について
椙山女学園大学助手の小川真理子先生に、制作中のドキュメンタリー作品のダイジェスト版上映と、研究報告を行っていただきます。
■発表要旨
発表者は、2012年8月、フランスで行われた舞踏家、若松萌野氏のワークショップの模様を撮影、現在、彼女の表現活動についてのドキュメンタリー映像を制作中である。今回の発表では、映像の一部を紹介しながら作品の意図を報告する。
若松氏はニューヨークで活動後、拠点をヨーロッパに移し、近年は夏にノルマンディー地方にある自宅を開放して2週間の集中ワークショップを行っている。「私のダンスの基本は、とてもシンプルだ。それぞれの状況において、自分を取り囲むもの/自己の外にあるもの(the environment)に対して、誠実であろうとすることだ。そのためには、身体をとおして、その取り囲んでいるものそれ自体に語らせることである。それは、存在となり、身体性となり、運動となるだろう。」このように語る若松氏独自の「空間」と「時間」の理論が、ワークショップの参加者に対して、具体的にアプローチされる。そして、フランスだけでなく、イタリア、ギリシア、ポルトガルなど多様なヨーロッパの参加者たちによる、彼らの身体における試みも興味深いだろう。
「奇異な」と判断されがちな舞踏表現であるが、発表者は、とくに、若松氏のワークショップでの実践を映像化することで、そのような判断が想定していないような理論的奥行きを表すことを目標としたい。

2011年度 中部支部第3回研究会

日時:2012年3月3日(土)13:00~17:30
会場:愛知淑徳大学長久手キャンパス(愛知県長久手市片平9番地)
11号棟1F ミニシアター
http://www.aasa.ac.jp/guidance/nagakute.html

●研究会スケジュール

・当番校挨拶/13:00~13:10
○第1部 基調講演/13:10~14:10
「映像をアーカイブすること~映像人類学から見たビジュアルアーカイブ」
講演者:大森康宏氏(立命館大学映像学部教授)

・ディスカッション+会員との意見交換/14:10~14:40
~休憩

○第2部 学生映像作品プレゼンテーション/15:00~17:30
[参加校]
・愛知淑徳大学
・椙山女学園大学
・静岡産業大学
・中京大学
・名古屋市立大学
・名古屋学芸大学
・名古屋大学

*研究会終了後に簡単な懇親会を行います(17:30~19:00)
会場:食堂スペース(10号棟1F サロン・シーボー)
会費は1,500円(学生のみ500円),事前申込不要です

○会場へのアクセス
・市バス
地下鉄東山線「本郷」2番のりばより名古屋市営バス「猪高緑地」行き乗車、
終点「猪高緑地(愛知淑徳大学)」下車(所要時間約15分)
http://www.aasa.ac.jp/guidance/map.html

・お車でお越しの場合
北門側に教職員専用駐車場がございます。北門守衛室にて「映像学会中部支部」と
お伝えいただき、ご入場ください。詳しくはキャンパスマップをご覧ください。

2011年度 中部支部第2回研究会

日時:2011年12月3日(土)15時~18時
会場:椙山女学園大学星ヶ丘キャンパス(名古屋市千種区星が丘元町17番3号)
教室:文化情報学部メディア棟128室

■研究会概要:テーマ「映像アーカイブ」
第一回「デジタルアーカイブ」に引き続いて、第二回は「映像アーカイブ」と題して、いくつか問題を提起し、それについてディスカッションを行う。

デジタル化され気軽、身近に見ることが可能になった今日、私達は「観る」「観た」ことで、「知った」「知識を得た」から「理解した」と誤読しているのではないか。私たちが行っている映像消費行為はあくまで「観た」ということであり、制作者、撮影者とインフォーマントとの関係を理解し、そこに描かれていることが「伝わった」「伝えられた」のとは深度が異なっていると考えられる。20世紀後半のムーブメントとして見ること=知ることと理解されてきているが、そうした視覚的な情報だけが大事なのではなく、他方で接触可能な距離感が伝える情報の重要性も同時に考えなければならないのではないだろうか。

◇基調講演での問題提起(映像人類学の立場から)

・「アーカイブ」に関して:
「デジタル」と「アナログ(フィルム、現在、進歩途中にあるペーパープリントなど)」を比較した場合、前者はフォーマットが次々に変わるだけでなく、実は劣化することが分かってきつつあるのに対し、後者には少なくともそれらの心配はない。
・「映像による記録」に関して:
手軽に撮影・配信可能なデジタル映像には、その手軽さゆえの危険があるのではないか。すなわち、撮影者(他にも作品に関わった人びと)とインフォーマント(主に研究者への情報提供者)の間の信頼関係が映り込んだアナログ映像には、デジタルの手軽な、しかし高解像度という意味で情報量の多いとされる映像とは異なる質が含まれているのではないか。この質こそが、今後のアーカイブにも求められてくるのではないか。

研究会スケジュール
・当番校挨拶:15:00~15:10
・基調講演:15:10~16:10「映像をアーカイブすること~映像人類学から見たビジュアルアーカイブ」

講演者:大森康宏氏(立命館大学映像学部教授)
・ディスカッション+会員との意見交換:16:10~16:40
・休憩(準備):16:40~17:00
・研究発表:17:00~17:30「写真と風景を往き来する眼差し」

発表者:茂登山清文氏(名古屋大学大学院情報科学研究科准教授)
◇発表概要
現代ドイツにも見られるように、写真表現において、風景をモチーフの主要な部分としてきたアーティストは少なくな。そこに D. Campanyは「自然を制御する欲望」を見、S. Brightは「逃避,郷愁の形」でもあると指摘する。一方で「ピクチャレスク」は、絵画と風景とを往還するなかで、現実の景観をつくりだしてきた。この発表では、美術作品と風景とが交差する事例にふれつつ、写真というメディアを通して表象されるアーティストの眼差しと景観づくりとの関係をさぐる。
・ディスカッション:17:30~18:00

■終了後、懇親会(星ヶ丘駅前)。

■交通アクセス
星ヶ丘キャンパス
http://www.sugiyama-u.ac.jp/sougou/access.html

支部研究会は非会員にも開かれていますので、関心のある方々にもお声をおかけの上、ぜひともご参加くださいますようお願い申し上げます。

2011年度 中部支部第1回研究会

日時:2011年9月23日(金・祝)14時~17時15分
会場:IAMAS 情報科学芸術大学院大学(岐阜県大垣市領家町3丁目95番地)
本校舎3階小ホール

●第一部:
研究発表
「儀礼としての映像視聴イベント―パブリックビューイング参加者の日独比較分析」
西尾祥子会員(名古屋大学大学院国際言語文化研究科博士後期課程)

要旨;
テレビ放送されるイベント視聴を儀礼の通過と見なす、いわゆるメディア・イベント
論が90年代以降耳目を集めてきた。現在ではパブリックビューイングと呼ばれる家庭
外での映像視聴イベントが世界各地で展開している。筆者はパブリックビューイング
参加後のアイデンティティ認識をめぐる問題を明らかにするために、日独参加者への
インタビュー調査について、ジェネップの儀礼研究を理論的枠組みとしたプロトコル
分析を行った。イベント期間中は脱構造的環境が発生し、国旗や国歌に関する問題を
棚上げする様子は日独で共通点があったが、儀礼通過後に集合的アイデンティティだ
けでなく自己アイデンティティの肯定が見られるドイツ参加者に対し、日本の参加者
にはどのような傾向も見られないという差異が発見された。

●第二部:
話題提供+ディスカッション
メディアアートの保存と活用を行う公的機関の設置に関する動向が不透明な現在,メディ
ア芸術コンソーシアムのオープントークの場において,メディアアート等のアーカイヴ
の議論がどのように展開されているのかを理解する。また今日活動するアーティスト
や研究者がそれぞれの立場により,そもそも「アーカイヴ」に何を期待し実際何をすべ
きなのかについて議論し,機構部分の構築作業が不可欠なメディアアート(映像表現を
含む)の表現特性を踏まえ,中部支部会員同士が「アーカイブ」に関する問題意識につ
いて意見を交わす。

登壇者
話題提供+パネラー:関口敦仁氏(メディアアーティスト/IAMAS学長)
パネラー:幸村真佐男氏(メディアアーティスト/中京大学情報理工学部教授)
パネラー:前田真二郎氏(映像作家/IAMAS准教授)

○研究会スケジュール
14:00~14:10 当番校挨拶
14:10~14:40 支部会員研究発表
14:40~15:00 休憩(準備)
15:00~15:15 話題提供(メディアアートのアーカイヴ)
15:15~17:00 ディスカッション+会員との意見交換
17:00~17:15 支部総会

交通案内
・タクシー:JR大垣駅北口から約5分
・バス:JR大垣駅北口から「黒野」または「経大」行き 約10分
・お車の場合:一般の方・学生用の駐車場が正門向かって右側にあり
・Googleマップ:http://g.co/maps/bekk6


研究会終了後,懇親会を予定しています。
支部研究会は非会員の参加も歓迎しておりますので、
ぜひ関心のお持ちの皆さまへご周知ください。

2010年度 中部支部第3回研究会

日時:2011年3月5日(土)午後2時~5時40分頃まで
会場:中京大学 八事キャンパス センタービル(0号館)0705教室

○第一部 研究発表(午後2時~3時20分頃)

・楊 紅雲 会員(名古屋外国語大学 非常勤講師)
【題名】中国映画流通市場における目下の急務
―配給体制の市場化と海賊版の撲滅

【要旨】目下の中国映画産業は流通面において、その発展を大きく阻害している主な
要素として、まず考えられるのは政府による配給市場の独占と海賊版DVDの続出である。
前者は配給市場のアンバランスを招き、後者は製作コストの回収に大きな影響をもた
らした。製作体制の改革を行うと同時に、配給体制の市場化と海賊版の撲滅は、健全
な映画流通システムを構築する上で最も重要な課題であり、政府にとって目下の急務
でもあると言える。

・幸村 真佐男 会員(中京大学情報理工学部)
【題目】素数映画その1 n進法による素数分布の可視化

【要旨】
ウラムの螺旋の事を素数な年の2011年の新年に知った。それで以前から気になってい
た素数進数で素数分布を表現するとどうなるかを確かめてみた。特に1471進数で表現
された素数分布に合成数と素数バンドともいうべき45度の角度の縞模様が現れた。

○第二部 学生作品プレゼンテーション(午後3時30分~5時40分頃)
参加予定校
・中京大学
・名古屋市立大学
・名古屋学芸大学
・名古屋大学
・静岡産業大学
・IAMAS
・愛知県立芸術大学

○会場へのアクセス
会場へは公共交通機関でお越し下さい

[交通アクセス]中京大学八事(やごと)キャンパス
名古屋市営地下鉄 八事(やごと)駅5番出口 徒歩0分
(アクセスマップ)
http://www.chukyo-u.ac.jp/information/access/index.html

[会場の教室]センタービル(0号館) 0705教室
八事駅5番出口直結のビルで7階へお越し下さい
(キャンパスマップ)
http://www.chukyo-u.ac.jp/information/facility/g1.html

2010年度 中部支部第2回研究会

日時:2010年12月10日(金)17時~19時半頃まで
会場:名古屋文化短期大学 A館3階アセンブリーホール

第一部 17:00~17:45 研究発表とディスカッション

畑あゆみ会員(愛知県立大学他非常勤講師)
<非人称の空間>というユートピア
自主記録映画『沖縄エロス外伝・モトシンカカランヌー』(1971)における上映運動の試み

研究発表要旨

『圧殺の森―高崎経済大学闘争の記録』(1967)を皮切りに盛り上がりを見せた1960年代末から1970年代初頭にかけての独立プロによる自主記録映画運動は、小川紳介や土本典昭、東陽一ら岩波映画出身のいわば「プロ」の作家たちだけでなく、運動の大きなうねりに刺激を受け映画製作を始めた多くの「小川以降世代」の若手ドキュメンタリストたちによっても支えられた。本発表では、この新左翼運動と密接に連携した自主上映ブームのなかで、当時の若手製作者たちが自らの自主上映運動の「場」をどのように捉え、理想化し、そしてそこに集まる観客とどのように向き合おうとしていたのかという点を検証してみたい。

第二部 18:00~19:30 講演とディスカッション

藤田修平氏(慶応大学環境情報学部専任講師)
台湾でのドキュメンタリー制作~方法論、歴史・ネイションをめぐって~」
1)作品の紹介と内容、背景の説明
2)制作方法について(その問題点、課題など)
3)そこで考えたこと(国民国家、オーラルヒストリーなど)

藤田修平氏略歴

南カリフォルニア大学の大学院で映像制作を学んだ後、台湾で制作活動を始める。台湾での生活や体験を基にした長編映画「寧静夏日」はフィラデルフィア映画祭や釜山国際映画祭をはじめとして、世界各地の映画祭で上映された。その後、神奈川県に住まいを移し、第二次世界大戦中に日本で軍用機の生産に従事した約八千人の台湾の子供たちに関するドキュメンタリー「緑の海平線」をプロデューサーとして、郭亮吟監督と4年をかけて制作。2003年より慶應大学環境情報学部の専任講師を務める。(研究室ウェブより転載)

*その他,会員による研究発表も予定しています。(発表者未定)

アクセス
http://nfcc-nagoya.com/juken/gaiyo/access/index.html

地下鉄新栄駅から徒歩2分です。構内に駐車できるスペースがないので、できるだけ公共交通機関を使って来てください。(周辺にはコインパーキングが多数ありますので、お車でお越しの際はご利用ください。)

正面玄関から入りエレベーターに乗り、三階で降りてください。会場はエレベーター右手にある大講義室です。

2010年度 中部支部第1回研究会

日時:201084日(水)15時~18

会場:中部大学人文学部棟 愛知県春日井市松本町1200

教室:2512教室(予定)

プログラム:

1.講演「日本のアニメ産業の歴史と発達 -いつ「アニメーション」が「アニメ」になったのか-」津堅信之氏講演会

スピーカー:津堅信之先生(京都精華大学マンガ学部准教授)
*日本のアニメーションの発達について、主に産業化とその特異性について、
そして近年の製作委員会方式の普及とその問題点について、解説したいと思い
ます(津堅氏)。

2.研究発表
中国映画のグローバル化(チャン・ツィイー出演作を中心に)」
スピーカー 徐冬梅氏(名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程)
放送局Channel4の映画事業はなにをもたらしたか - 今日の英国映画産業をめぐる放送局・政府機関・地域の映画組織の支援・協働体制」
スピーカー 木村めぐみ氏(名古屋大学大学院国際言語文化研究科博士後期課程)

3.交流会

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